��.ケイとユウリの話 ページ42
僕は海を見たことは無いけれど
“潮か引く”ってこういう事なのかな。
こんなに広かったっけと思う程ガラン
とした室内にいつもと変わらず寝そべる慧。
さしずめ波が去った後キラリと光る貝殻みた
いに、綺麗だけど一人で少し寂しそう。
「慧は行かないの？」
籠は開けられ鳥は放たれた。
どこにでも飛び立てるのに。
その先までは知らないけどさ。
涼介がここへ来て一年、父が死んだ。
突然な様で突然じゃなかった事くらい僕には
分かる。
空白は反乱を生む。
死の際で次期の主に指名されたのは、宏太で
はなく涼介だった。
皆が絶句して少なからず宏太を憐れんだけど
当の本人は至って冷静で晴れやかだった。
「さぁて、やっと自由なれる」
ビリビリと頁を破り捨てた宏太は楽しそうに
そう言った。
「こんなものとっくに全部頭に入ってる。
旅立ちに重い荷物は不要だな 」
“旅立ち”だなんて明るいものじゃないでしょ。
ダミーとはいえ後継者として育てられた宏太
に一生自由は無い。
謀叛の指導者となり得る危険分子として命を
狙われる筈。
それは僕たちも同じ。
だからこそこうして閉じ込められてきた。
「どうせ生きるなら身軽に、本当に大切な
ものだけあれば良いのさ 」
閉じ込められたふりをしていた聡明な鳥は、
満月の夜こう言い残しひかとともに姿を消した。
後を追ってゆうと、圭人、雄也が海を目指して
去り、だいちゃんもまた行き先を告げずに旅
立った。
「……俺は太陽でありたいからさ、何かひと
つを求めてしまうのは違うかなって。
ここにいたら自分らしく生きれなくなり
そうだから」
だいちゃんが欲しかったものって何だった
のかな。
僕は最後まで知らないふりをしてあげた。
残ったのは僕と慧。
「ゆうりこそいつまでいるつもり？ 」
僕は慧の横に同じように寝そべった。
ふかふかの絨毯の上で慧とゴロゴロするのが
好き。
「僕、面倒なの嫌いだし。
涼介のお嫁さんにしてもらおうかなぁ、」
“ふふふ” 慧は笑う。
それから少しだけ遠い目をして、
「誰もいないんじゃ帰って来れない
でしょ？
俺はここで待ってるよ」
僕は知っていた。
慧も知っていた。
ー もう誰も戻って来ないこと ー
知っていたけど
目を合わせ“そうだね”ってキスしたんだ。
これは、砂で出来た楽園の
さらさら儚い夢みたいな昔話。
＊終＊
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ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)少しずつ書いたお話たちが一杯になりました！短いので設定もある程度自由に楽しく書いています。気になるお話があれば嬉しいなぁ思います♪私も読んで頂けて幸せです＊ (2017年10月15日 18時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - こんにちは、ぴよさん。今まで読みたい〜って思っていた場所のお話が読めて幸せです。公開ありがとうございます。 (2017年10月15日 16時) (レス) id: 291fc33caa (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - みるみるみるきーさん» グランマニエとか 笑 私たちにはやっぱり有閑倶楽部なのでしょうかね。学園ものは王道ですが間違いないわくわく感が味わえますね( ´∀｀)楽しい♪ (2017年9月22日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - ナイスですな、有閑倶楽部風味♪私もわかりましてよ。まあ、今の子なら桜蘭高校ホスト部のが浮かぶのかしら…でも、やっぱ有閑倶楽部かぁーー！みろくとせいしろうとかとか。 (2017年9月22日 13時) (レス) id: 40e0ecae06 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)まさにリクエストは有閑倶楽部風でした 笑 さすがヨウコさん！私そんなに詳しくはなくてちょっと不安だったんですがオッケ貰えて良かったです☆生徒会はやはり鉄板ですね。 (2017年9月15日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよ
| 作成日時：2016年11月30日 0時
