��.コウタの話 ページ40
俺が海に思いを馳せて、ぼんやり
夢見てる間も宏太は常に前を見ていた。
その日その日を生きる中で宏太だ
けがその先を見据えていた。
跡継ぎである彼には当たり前の事なのか。
いつでも分厚い本を抱え、絶え間なく
頁を辿っていた。
「ねぇ、煩くない？
こんな所で勉強できるの？」
その昔机に向かう背に問い掛けたことがある。
自由気儘な弟達に気遣い等という言葉は皆無。
今更単純な疑問。
「平気だよ、みんなの声が聞こえてると
妙にやる気が湧いてくるんだ。
側にいてくれた方が良い、」
クルリと振り向いた宏太は、目を細め笑った。
笑顔だけは子供の頃と同じ。
くしゃっとしたその顔は俺達に安心をくれる。
“兄弟たるもの全てを共有すること”
宏太が決めたルール。
母親から引き離され、閉じ込められ、
心も身体も無理矢理に売られた俺達が生き
ていけたのはこのルールがあったから。
快楽と隣り合わせの慰めに余計な感傷や悲
嘆は無い。
いつも傍らに誰かがいる、それだけで良い。
長雨が終わりようやく光君が戻ってきた。
久しぶりに全員が揃う。
この時ばかりはサラサラと吹く砂○○が懐
かしいと思える。
見飽きた光景の筈なのに、“ひと“って勝手な
生き物だ。
ゆうとが窓に張り付いてしきりにシャッター
をきる。
圭人が爪弾く音色に合わせゆうりが踊り、
慧はだいちゃんの膝枕で眠っている。
光君は絵を描いているらしく、涼介が
物珍しそうにカンバスを覗き込んでいた。
見回したいつもの光景に安堵して、最後に宏
太に見る。
いつもみたいに頁を捲る勤勉な兄の姿がある
はずで、
…あ、れ
宏太は本を閉じていた。
傍らには何にもなくてただじっと兄弟達を
見ていた。
愛しいものを見る様に都度細められる眼差
しが次々にその姿を追っていく。
最後にこっちへ向けられるであろう瞳と目が
合うのが気まずくて慌てて見ないふりをした。
宏太ってこんな風に
俺達を見ていたんだろうか。
いつから？気付かなかっただけ？
不安なのか焦燥感なのか少し胸がざわついた。
「……ね、宏太」
立ち上がりソファーに座った宏太の隣に座る。
不安を消す方法はこれしか知らないからキス
をした。
思考がふわふわしてきた。
そう、これで良い。
“あっ、いいなぁ
だいちゃん、俺達もしようよ”
慧の声が遠くで聞こえた。
きっと宏太は知ってたんだ。
籠の中で生きる退屈な日々がどんなに尊いか。
一度飛び立った鳥たちはもう鳥籠には
戻らない、戻れないってことも。
＊next?＊
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ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)少しずつ書いたお話たちが一杯になりました！短いので設定もある程度自由に楽しく書いています。気になるお話があれば嬉しいなぁ思います♪私も読んで頂けて幸せです＊ (2017年10月15日 18時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - こんにちは、ぴよさん。今まで読みたい〜って思っていた場所のお話が読めて幸せです。公開ありがとうございます。 (2017年10月15日 16時) (レス) id: 291fc33caa (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - みるみるみるきーさん» グランマニエとか 笑 私たちにはやっぱり有閑倶楽部なのでしょうかね。学園ものは王道ですが間違いないわくわく感が味わえますね( ´∀｀)楽しい♪ (2017年9月22日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - ナイスですな、有閑倶楽部風味♪私もわかりましてよ。まあ、今の子なら桜蘭高校ホスト部のが浮かぶのかしら…でも、やっぱ有閑倶楽部かぁーー！みろくとせいしろうとかとか。 (2017年9月22日 13時) (レス) id: 40e0ecae06 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)まさにリクエストは有閑倶楽部風でした 笑 さすがヨウコさん！私そんなに詳しくはなくてちょっと不安だったんですがオッケ貰えて良かったです☆生徒会はやはり鉄板ですね。 (2017年9月15日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよ
| 作成日時：2016年11月30日 0時
