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胸に手を当ててみる。

“だいちゃんは
大切にした方が良いよ” って

大切にするってどういう事だ。
このままが良いって事?
向き合うって事?逃げないって事?

「………あぁ、もう!」

いくら考えても分かる筈無いから、
俺は勢い良く立ち上がった。
自然と足は、商店街へと向かって動き出す。


つまりは、これが“答え“なんだ。



賑わう店々の間を抜け暫くすると、三差路に
差し掛かる。
迷う事無く一番左の道を選んだ。
街路樹が心地好い木陰を作り出すこの道を
選んだのはあの日があまりに暑かったから。
道中、蝉の声が絶え間なく降り注いでいた。


初めて通る道だった。
御贔屓先へは真ん中の道を行くのが常。
真夏の日差しがジリジリと照りつける昼過ぎ
どうにも我慢出来なかった。


パシャ、パシャ……


涼しげな気配に汗ばんだ額を拭い、そちら見
上げてみれば確かに板塀の向こうから水音が
する。
高すぎて俺には覗き込めそうもないやと諦め
かけた時、真横に僅かな隙間を見付けた。
朽ちた木目が剥がれ落ち、丁度覗き窓の様な
格好になっている。


「………………、あっ 」


タライに浸した真っ白な足先が踊るように
水を弾く。
キラキラ煌めく水滴の美しさに思わず声をあ
げてしまった。


「………こんにちは。

時間があるなら少し涼んでいきま
せんか?」


塀の向こうから聞こえてきたのは、
少し間延びした蕩けるように甘い声。

その日は確かに、暑かったんだ。
必死に言い訳を並べ、促されるまま裏口へ
と回った。


「いらっしゃい。
隣にどうぞ、光に貰った西瓜も冷えて
るよ。」


「あ、えっと……」


日除けを立て掛けた縁側にその人は居た。

膝まで捲り上げた両足をタライに浸し、
傍らには真っ赤な西瓜と麦茶、そして山積
みの本。


「こんな日にお届け物とは、随分働き者な
んだね。

今が一番暑い時分だよ。」


麦茶を差し出す細く白い指先が目の前で
ゆらゆらと揺らめいていた。
あぁ、これは蜃気楼が見せた幻なのかもし
れない。

だって、


こんなに綺麗な人見た事が無いもの。

……

……

いのちゃんは、自身をしがない“詩人”
と名乗り、俺を“だいちゃん”と呼んでくれ
る様になった。

毎回寄り道とはいかないから、急ぎの用向き
を控えた日は手を振るだけ。
それでも、にっこり微笑んで手を振り返して
くれるそれだけで十分だった。


想いを巡らせながら、
いのちゃんの家の前に立つ。

*→←*



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作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - ひびた。さん» ひびた。さんありがとうごさいます!詩って難しいですね、小学生以来書いた気がします。だいちゃんが良いひとで、私も書きながら胸が一杯になりました(>_<)ytin再会はだいちゃんの優しさがもたらした奇跡かもしれませんね。続も是非お付き合い下さい♪ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - けいままさん» ありがとうごさいます。けいままさんに詩を読みたいとのコメ頂いて私覚悟を決めました 笑 お届け出来て一安心です** 高木君を見送って、ひとり見上げた秋の空 。いのちゃんが書いた最初の作品という事で☆気に入って頂けて嬉しいです(*´ー`*) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» 今日は。素敵なコメありがとうごさいます。私もにゃーごさんと全く同感でたった一つでも拠り所があれば結構頑張れてしまうものだなと思っています。お話中では皆の気持ちに寄り添って見上げた空の色まで表現出来たら嬉しいです。次章も是非読みにきて下さい☆ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» ありがとうごさいます。お話があちこちに繋がってどんな世界が広がるのか。私も書きながら探っていきたいと思います。次章、今暫くお待ち下さい( ´∀`) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - coさん» コメありがとうごさ います( ^∀^)色んなありいのを考えたのですが、だいちゃんはやっぱりだいちゃんでした。いのちゃんの気持ちを分かっていながら黙って側にはいられない。切ないけれどそれが答えなんですね。続編も宜しくお願いします* (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作成日時:2016年10月23日 13時

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