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「いらっしゃい、ゆうと。」


それから俺は、いのちゃんの元を
正々堂々と訪れる事が出来る様になった。
裏木戸を潜れば、毎度毎度飽きもせずいのち
ゃんが楽しげに俺の名を呼ぶ。
縁側に隣り合って座り、ぽつりぽつりと色ん
な話をした。



「裕翔は、いつも上等な服を着ているね。」



いのちゃんは、生地の感触を確かめながら俺
の上着の袖辺りをさわさわと撫でた。
この秋に誂えたばかりの新しい上着は、身な
りを気にする父からの贈り物だった。
後継者としての期待が張り付いたそれは、俺
にはどうにも重すぎて肩が凝る。



「……うん、父は格好を気にするから。」



おおよそ学生とはほど遠い身なりは、級友と
の間に微妙な距離を生む。
言葉を交わしながらも彼らが見ているのは、
背後にある俺の家柄や父の影響力だった。
誰も俺自体に興味など無い。



「裕翔は背が高いからよく似合うね。

ふふ、格好良い。」




いのちゃんは、
いつもただ俺だけを見てくれる。



「…でも、そんなに窮屈なら脱いじゃえば?


俺の前では、いくらでも甘えて良いんだよ。」



そのまま袖をぐいぐい引っ張られ、上着を脱
ぐよう促される。
そうして縁側の外に投げ出された自身の膝を
指して、こっちこっちと俺を呼ぶのだ。

俺は、シャツ一枚になり、そろそろといのち
ゃんの華奢な太腿に触れた。
薄く骨っぽいそこに頬を寄せ、そのまま庭に
向けて身体を横にする。


……膝枕だ、

今は亡き母親も細くたおやかな人だった。
こうして膝枕をしながら、子守唄を聞かせて
くれた事もある。
俺は、それが嬉しくて堪らず度々母親の膝に
飛び付いた。


毎日を、“ただ、生きていた” あの頃。
悩みや不安、苦しみなんて何も無かった。



「……いのちゃんの膝枕気持ち良い。」


「いつでもしてあげる。ほらぁ、」


“よしよし”


そう言っていのちゃんは、俺の頭を優しく撫
でた。
何度も何度も行き来する掌の温もりが心地好
く俺を慰めてくれる。

父親は、甘えることを許さない人だった。
でも、元来甘えん坊で人と争うのが苦手な俺
は父親が望む人間にはなれない。


「裕翔は、そのままで良いんだよ。

人の本質は、
無理矢理変えるものじゃない。」


「…………うん。」


素直に返事した俺に、いのちゃんは満足そう
に微笑んで “良い子だね” ともう一度殊にゆ
っくり頭を撫でた。

*→←*



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - ひびた。さん» ひびた。さんありがとうごさいます!詩って難しいですね、小学生以来書いた気がします。だいちゃんが良いひとで、私も書きながら胸が一杯になりました(>_<)ytin再会はだいちゃんの優しさがもたらした奇跡かもしれませんね。続も是非お付き合い下さい♪ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - けいままさん» ありがとうごさいます。けいままさんに詩を読みたいとのコメ頂いて私覚悟を決めました 笑 お届け出来て一安心です** 高木君を見送って、ひとり見上げた秋の空 。いのちゃんが書いた最初の作品という事で☆気に入って頂けて嬉しいです(*´ー`*) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» 今日は。素敵なコメありがとうごさいます。私もにゃーごさんと全く同感でたった一つでも拠り所があれば結構頑張れてしまうものだなと思っています。お話中では皆の気持ちに寄り添って見上げた空の色まで表現出来たら嬉しいです。次章も是非読みにきて下さい☆ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» ありがとうごさいます。お話があちこちに繋がってどんな世界が広がるのか。私も書きながら探っていきたいと思います。次章、今暫くお待ち下さい( ´∀`) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - coさん» コメありがとうごさ います( ^∀^)色んなありいのを考えたのですが、だいちゃんはやっぱりだいちゃんでした。いのちゃんの気持ちを分かっていながら黙って側にはいられない。切ないけれどそれが答えなんですね。続編も宜しくお願いします* (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作成日時:2016年10月23日 13時

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