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彼が運び込まれてきたのは、
日にちが変わるか変わらないか。
正にこれからこの街が、真の姿を見せる頃。

身体を売ってその日を生きる女性等が道端に
蹲る少年を助けたのも、どこかに己の境遇を
重ねたからかもしれない。


激しく咳き込む背を擦り、口許を拭えばポタ
ポタと真っ赤な鮮血が染みを広げていく。
真っ白と言うより蒼白、息苦しさに目を潤ま
せたその姿は、彼が不治の“流行り病“である
事を如実に物語っていた。



「………いや、帰りたく、ない………」



彼はさっきからうわ言の様にそればかり繰り
返している。
明け方近くに現れた母親と名乗る女性にすん
なり引き渡す事が出来なかったのは、
彼が弱々しい身体でしかし頑なに彼女を拒絶
しているのが分かったから。


「暫く入院させましょう。

治療費の心配は要りませんから。」


俺の言葉に母親が頷くのを見届けた彼は、
それまでが嘘の様にすやすやと寝息をたて始
めた。


透けるように白い肌、唇にも仄かに色付きが
戻ってきた。
あどけなさの残る寝顔、痩せてしまってはい
たが一撫でした頬はふわりと柔らかだった。


規則的な寝息に誘われていつの間にか、
俺も眠ってしまったらしい。



「……………の、あの、ここはどこ?」



頭上から降る声にハッと目を覚ましたのと、
昼を知らせるサイレンが鳴り始めたのはほ
ぼ同時だった。


「……おはよう、調子はどう?

昨日の夜運ばれてきたの、
ここは一応診療所みたいな所かな。」


「…………みたい、な?」



「世に認められた場所では無いから。」


彼はベッドに身体を起こして、辺りを不思議
そうに眺めている。
それから何かを思い出した様に胸を押さえて
真っ直ぐに俺を見つめた。


綺麗な茶色の瞳だ。
どこまでも深く澄んでいる。


「あぁ、俺また血を吐いたのか。

先生が助けてくれたんだね、」



“先生”と呼ばれる程大層なものじゃない。

それに、


「俺は、“圭人”って言うの。君は?」


「………………けいと、

俺は、りょうすけ。山田 涼介だよ。」



多分この時から俺は、やまちゃんの特別に
なりたかったんだ。
名前で呼び合うだけで妙に胸が熱くなったの
を覚えている。


「暫くここに居ると良いよ。」


何も聞かず、深くを求めず。
この界隈で生きる鉄則を俺もやまちゃんも
ちゃんと心得ている筈だったのに。

*→←*



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - ひびた。さん» ひびた。さんありがとうごさいます!詩って難しいですね、小学生以来書いた気がします。だいちゃんが良いひとで、私も書きながら胸が一杯になりました(>_<)ytin再会はだいちゃんの優しさがもたらした奇跡かもしれませんね。続も是非お付き合い下さい♪ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - けいままさん» ありがとうごさいます。けいままさんに詩を読みたいとのコメ頂いて私覚悟を決めました 笑 お届け出来て一安心です** 高木君を見送って、ひとり見上げた秋の空 。いのちゃんが書いた最初の作品という事で☆気に入って頂けて嬉しいです(*´ー`*) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» 今日は。素敵なコメありがとうごさいます。私もにゃーごさんと全く同感でたった一つでも拠り所があれば結構頑張れてしまうものだなと思っています。お話中では皆の気持ちに寄り添って見上げた空の色まで表現出来たら嬉しいです。次章も是非読みにきて下さい☆ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» ありがとうごさいます。お話があちこちに繋がってどんな世界が広がるのか。私も書きながら探っていきたいと思います。次章、今暫くお待ち下さい( ´∀`) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - coさん» コメありがとうごさ います( ^∀^)色んなありいのを考えたのですが、だいちゃんはやっぱりだいちゃんでした。いのちゃんの気持ちを分かっていながら黙って側にはいられない。切ないけれどそれが答えなんですね。続編も宜しくお願いします* (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作成日時:2016年10月23日 13時

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