＊ ページ25
「先生、お邪魔するよ！」
やまちゃんは狭い階段を一気に駆け上ると、
そんな言葉と共に勢い良く扉を開けた。
…
…
「…………よぉ、お帰り。涼介に圭人、 」
ややあって、カラリと片付いた事務所の奥か
ら伸びやかな声がそう応じて出迎えてくれる。
ソファーの向こう側に恐らく寝そべっていた
であろう彼は、金色の髪を煌めかせながらゆ
っくりとその姿を現した。
揃いのベストに舶来のネクタイを締めた完璧
な佇まいには、彼だけが持つ気品と妙な迫力
が感じられる。
「…………んっ、随分綺麗に片付いてるね？」
圧倒的な雰囲気と高い洞察力を持つ彼は、私
生活も仕事も至極スマートにこなしながら、
身の回りに関してだけはてんで無頓着な男だ
った。
最後に訪ねた折りも、事務所内は雑多と混迷
に満ちていたと記憶している。
山積みの書類や吸いかけの煙草、無造作に掛
けられた上等なネクタイ……今はどこにも見つ
けられない。
それどころが既にヤカンは湯気を立て、応接
机にはきちんとお茶請けが並んでいる。
「………だろ？笑
丁度三年位前になるかな、今や優秀で可
愛い助手が付いてるからね。」
「なんだそりゃ？そんな奇特な奴がいる
とは思えないけどな、
是非会ってみたいもんだ。 」
そう言ってやまちゃんが小首を傾げる様を、
薮ちゃんは目を細め楽しげに眺めている。
「それが生憎、今は外出中なんだ。
否、外出して貰ってるってのが正しい
のかな、」
薮ちゃんが他人を語るのは稀有な事だ。
世の隙間やら不思議を追うのに熱心ながらヒ
ト自体にはあまり興味を持っていないから。
柔和な態度も温和な笑顔も所詮 “営業向け”
でしか無い。
兎も角、彼がひかる君の他に“お気に入り”を
見つけたことだけは明白だった。
「そんな訳で、留守を預かっていた
仕事場も綺麗なもんだよ。
ほらっ、これが鍵。 」
手渡されたのは何とも懐かしい鈍色の鍵。
掌に納まる重みはかつて仕事場を鮮やかに甦
らせる。
「下宿先も手配していたんだが、思いの
外順調な航海にまだ鍵が届いてない。
明日には届けさせるから、今日だけは
件の“仕事場”に泊まってくれ。
あそこなら寝床には困らないだろう？」
「…………で、も、あそこは、」
「こっちは留守を預かって貰ってた身分
だ。
贅沢は言えないよ、なぁ先生？」
戸惑う俺を遮ったのはやまちゃんだった。
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ぴよ(プロフ) - ひびた。さん» ひびた。さんありがとうごさいます！詩って難しいですね、小学生以来書いた気がします。だいちゃんが良いひとで、私も書きながら胸が一杯になりました(>_<)ytin再会はだいちゃんの優しさがもたらした奇跡かもしれませんね。続も是非お付き合い下さい♪ (2017年3月5日 13時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - けいままさん» ありがとうごさいます。けいままさんに詩を読みたいとのコメ頂いて私覚悟を決めました 笑 お届け出来て一安心です＊＊ 高木君を見送って、ひとり見上げた秋の空 。いのちゃんが書いた最初の作品という事で☆気に入って頂けて嬉しいです(*´ー｀*) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» 今日は。素敵なコメありがとうごさいます。私もにゃーごさんと全く同感でたった一つでも拠り所があれば結構頑張れてしまうものだなと思っています。お話中では皆の気持ちに寄り添って見上げた空の色まで表現出来たら嬉しいです。次章も是非読みにきて下さい☆ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» ありがとうごさいます。お話があちこちに繋がってどんな世界が広がるのか。私も書きながら探っていきたいと思います。次章、今暫くお待ち下さい( ´∀｀) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - coさん» コメありがとうごさ います( ＾∀＾)色んなありいのを考えたのですが、だいちゃんはやっぱりだいちゃんでした。いのちゃんの気持ちを分かっていながら黙って側にはいられない。切ないけれどそれが答えなんですね。続編も宜しくお願いします＊ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよ
| 作成日時：2016年10月23日 13時
