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「……んぁ、ひぃ…あぁ……っ」


「…っ、い、のお君、腰揺れてる」


下宿先の自室、寝て起きるだけの何も無い
部屋に伊野尾君の鳴き声が響く。
従順な身体を軽く諫めてから、望み通りに一
番深いところを抉ってあげる。



「あ”ぁっんん…ひぁ……ぁ、」



「…気持ち、良い…伊野尾のここ、」


快感の波に溺れパクパクと助けを求める伊野
尾君が堪らなく愛しい。
唇をぴたりと塞ぎ、与えられるがままに揺れ
る細腰をするすると撫でた。



旧校舎で初めて伊野尾君を抱いた日、シャツ
の奥に見た核心の正体に俺は震えた。

伊野尾君は何も知らなかった。
軽く触れただけで朱く染まっていく身体、
唇でなぞればビクビク震えて長い睫毛にうっ
すら涙さえ浮かべてしまう。


伊野尾は何も知らなかった。
そんなあられもない姿が俺自身をどれだけ昂
らせ、その先を求め止まらなくなるのか。


どうにかこうにか入り込んだそこは、動くこ
とも儘ならない程に狭く震える様に蠢く。



「……伊野尾君、ここハジメテでしょ?」



「…………ぁ、んん、あぁ……っ、」



伊野尾君は何も答えなかった。
その代わり、咽の奥から絞り出す様に声を漏
らし、俺の背にすがり付き埋めたままの胸元で、


「……き、もち……いっ」


とだけ囁いた。







あの日以来、何度こうして身体を重ね合わせ
た事だろう。
校内では、ただの同級生然として軽口を交わ
すだけ。
併せたシャツの中身にも、後髪に隠れた項に
も触れられない。


行為を終え、隣ですやすやと寝息をたてる伊
野尾の重い前髪を撫で上げて、普段決して晒
されないおでこにキスをする。


この例えようもない愛しさの正体を、俺はと
っくに自覚していた。
共に果てる瞬間に喉元まで込み上げてくる想
いを何度臙下した事だろう。



“ ……伊野尾君、俺は ”



でも、どうしてもそれを伝えることが出来な
かった。
伊野尾君の側はいつも温かく、優しいから。
伊野尾君は、どんな時も必ず俺を受け入れて
くれるから。


……君の傍らに立ち止まりそうになる。
俺にはやらなきゃいけない事があるのに。
この時代を生き抜く為には足踏みしている
暇等無いのに。


伊野尾君から離れられなくなる自分が怖い。




「じゃあね、高木。」


目を覚ました伊野尾君は、それだけ言って
手を振ると薄暗くなった街角に消えていく。
伊野尾君もまた何も言わないし、何も聞かな
い。
俺達のふわふわとした宙ぶらりんの関係は、
間もなく一年を迎えようとしていた。

*→←*



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - ひびた。さん» ひびた。さんありがとうごさいます!詩って難しいですね、小学生以来書いた気がします。だいちゃんが良いひとで、私も書きながら胸が一杯になりました(>_<)ytin再会はだいちゃんの優しさがもたらした奇跡かもしれませんね。続も是非お付き合い下さい♪ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - けいままさん» ありがとうごさいます。けいままさんに詩を読みたいとのコメ頂いて私覚悟を決めました 笑 お届け出来て一安心です** 高木君を見送って、ひとり見上げた秋の空 。いのちゃんが書いた最初の作品という事で☆気に入って頂けて嬉しいです(*´ー`*) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» 今日は。素敵なコメありがとうごさいます。私もにゃーごさんと全く同感でたった一つでも拠り所があれば結構頑張れてしまうものだなと思っています。お話中では皆の気持ちに寄り添って見上げた空の色まで表現出来たら嬉しいです。次章も是非読みにきて下さい☆ (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» ありがとうごさいます。お話があちこちに繋がってどんな世界が広がるのか。私も書きながら探っていきたいと思います。次章、今暫くお待ち下さい( ´∀`) (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - coさん» コメありがとうごさ います( ^∀^)色んなありいのを考えたのですが、だいちゃんはやっぱりだいちゃんでした。いのちゃんの気持ちを分かっていながら黙って側にはいられない。切ないけれどそれが答えなんですね。続編も宜しくお願いします* (2017年3月5日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作成日時:2016年10月23日 13時

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