ろくでもない夜に (ymin)

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覚醒後のぼんやりとした世界、
天井が軋む乾いた音が俺を途端に現実
へと引き戻した。

ああ、これが夜のいのちゃんなんだ…。
出会った瞬間、手にしていた筈の答えが
そこにあった。

……あんまり優しく笑うからだ。
一緒に夕飯を食べて、涼介って呼んでくれて
俺の知らない幸せを教えてくれたから。

どうした訳か忘れてしまっていた。

でも、ここが仕事場だったとは…しかも


「…真上ってのは酷くない？」


自嘲気味に溢れる独り言。
朝食の話なんかよりよっぽど重要な事。
こんなんじゃ眠れないよ。


いのちゃんが男に抱かれている音がする。
もちろんいくら古い家だからと言って、直
接的な声や音が聞こえる訳ではない。
降ってくるのは、ただただ天井が軋む音。
重くなったり、軽くなったり、妙な静寂が
続いたり、、それらが連なって男に組み敷か
れるいのちゃんの姿が浮き上がる。

闇夜に溶けるその姿は、いつか見た父親と
若い女の行為なんかよりずっと生々しい。
健全な14歳の身体は、当然に熱くなった。
とても振り払えないその光景を思いながら
そっと自身に手を伸ばす。

馬鹿みたい。本当に馬鹿げてる。
天井の音をネタにして何やってんのさ。
虚しい行為と理解しながら、止まらない
身勝手な俺の手のひらと指先。


「…ぁ、い、のちゃん……っ」


しまいには彼の名前を口走りながら、クライ
マックスへと駆け上る快感を追った。
どこまでが現実か分からないまま、意識は
遠退き再び深い闇へと堕ちていく。


目覚めると下半身はベタベタ、突っ伏したま
ま下敷きになっていた右手は痺れていた。
こういうのを虚しいって言うんだ。
ベッドを抜け出し、風呂場へ向かう。
このままじゃ気持ちが悪い。


「…おはよ。涼介もお風呂？」


脱衣場の扉に手を掛けた瞬間、入れ替わる
様に中から現れたのは、ほかほかと湯気を纏
ったいのちゃんだった。

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