＊27＊ ページ27
ギシ、ギシ…
幅の狭い踏み板は、体重をかける
程に沈み込み持ちこたえようとする
反動で音をたてる。
昼の世界からやってきた俺には、その先の暗
がりが永遠に続く闇に見えた。
目を凝らしてもよく分からない。
右手に触れる板壁を頼りに、一歩一歩注意深
く踏み込んで足を進めていく。
どうしたって四年前を思い出してしまう。
何も分からないまま登ったこの階段。
その先で待っていてくれたのはいのちゃんで
俺を二階へと引き上げたのもいのちゃんだった。
そして今、
俺はまた彼を求めて二階へ上がる。
……そこには、光の道が通っていた。
オレンジ色の間接照明が廊下を真っ直ぐに照
らし、否応無しに一番奥の部屋へと導いてい
る。
構造からいって他にも部屋はある筈だが、
この光景を前にしては真っ直ぐに進む以外に
選択肢は無い。
“お客さま”は、こうやっていのちゃんのもと
に辿り着くのかと納得する。
導かれるままに光のなかを進んでいく。
心臓が、ドクドクと身体の奥の深いところで
脈を打つ。
鼓膜が揺れる程にもうその音しか聞こえなか
った。
怖いとか不安とか、何も分からない。
ふわふわとした足取りで、最奥に行き着いた
俺は洋風の白い扉に手を掛けた。
僅かな隙間から聞こえてきたのは、
「やだ、やめて……っ」
聞き慣れたいのちゃんの甘ったるい声と
聞きなれない怯えた声とが同時に響いて、
俺は我に返った。
そうだ、こんな時間に天井が軋む理由を確か
めるためにここまで来たのに。
「謝るから、離して…ぇ、んぁっ」
懇願するいのちゃんの声。壁が揺れる音。
ベッドが軋む音。苦しそうな声。
「…約束やぶったお前が悪いんだろ？
月曜日は、俺のものになるって。
何で来なかったんだよ…… 」
「…………涼介が……涼介が帰って来ない
から、待っててあげないと、
あっ、いやぁっ……あぁ、んっ…っ」
いのちゃんの口から漏れる鳴き声に、更に行
為が激しくなるのが分かった。
「抱かれてる時に、他の男の名前呼ぶなん
てプロ失格だろ。
黙って鳴いてろ、伊野尾。」
本当ならすぐにでも蹴破りたかった扉。
俺の動きを鈍くしたのは、聞き覚えのある声
が紡ぐ言葉を信じたくなかったから。
でも、“ いのお ” と呼ぶその響きは、やはり
彼だけのものだった。
俺は、観念して静かに扉を開いた。
「……や、ぶ…ちゃん ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀｀)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (
レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん！ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした！この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…（笑）素敵なお話ありがとうございました！ (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀｀)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな？なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です！また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
