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高校2年春、文理選択後のクラス替えの時。
貼り出された名簿に思わぬ名前を見つ
けた俺は、反射的に息を飲んだ。
新しい教室へ走ると、既に窓際の席に納まっ
た小さな姿が飛び込んでくる。


「おはよ、涼介。」


息が上がってなかなか言葉が出てこない俺
とは対照的に知念の第一声は涼やかだった。

ハァ、ハァハ、、、

「……ち、ねんって、理系じゃないの?」



知念の実家は老舗薬局。
繁華街の中心に5階建てのビルを所有してお
り、あらゆる分野の薬に精通する有名なお店
だった。
土地柄、異性または同性の行為に際する秘薬
などの品揃えも豊富で、そういった人脈の出
入りも激しいのだと知念は教えてくれた。



「……知念、お店継がないの…?」



当然の如く理系を選択し薬学部を目指すの
だろうと思い込んでいた俺にとって、まさに
青天の霹靂だった。

それに、

知念は、こんな思い切った事をする奴じゃ
ないと決めつけてもいたから。



「継がないけど。」


知念は、凝り固まった俺の心と身体を嘲笑う
かの様にすっきりとした表情ではっきりとそ
う宣言してみせた。



「僕、自由になりたいの。

違う世界で生きてみたい。」



知念が家業に対して少なからず嫌悪感を抱い
ている事はこれまでも容易に想像できた。
出会った頃から見た目に反して、知念は誰よ
りも大人だったし、同時に諦めも心得ていた。
それこそが俺達の共通点で、互いの距離を縮
めた原点だった筈なのに……

知念は、明らかに変わろうとしていた。



「……ねぇ、知念

俺の事、置いていかないよな…?」



思いの外、情けない声が出て焦る。
窓際の桜は満開で、そよそよとした春風が吹
き込むのに、それは寒くて震えたみたいな声
だった。




あれから一年、ずっとずっと考えている。

いのちゃんと ” 暮らすこと ”について。
解放されるべきは俺じゃなくて、いのちゃん
なのかもしれないって。

一際激しく軋む天井の上で、今日もいのちゃ
んが甘ったるい声で鳴いている。

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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀`)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん!ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした!この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…(笑)素敵なお話ありがとうございました! (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀`)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな?なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です!また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年8月30日 20時

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