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薮ちゃんといのちゃんが仕事の話
を始めた。
真面目な顔をしたいのちゃんを見るのは好き。
見とれそうになるのを抑え、夕食作りのため
キッチンへと移動した。

いのちゃんがプレゼントしてくれたストライ
プのエプロンを掛けた俺は、すっかり奧さん。
いのちゃんの美味しいという言葉が聞きた
い、その一心で料理を覚えた。


「うまっ!涼介また腕上げたな。」

「だろ?俺の奧さんに手出すなよ、薮。」


鯖味噌を口にした薮ちゃんがそう唸って、
すかさずいのちゃんが茶々を入れる。

「勝手に奧さんにすんな。」

俺は呆れ半分に聞き流し、奧さんだけは否定
した。
悔しいかな皆で食べる夕食は、泣きたいほど
に俺を幸福にする。


「ご馳走さま! じゃあ俺、帰るな。

……そろそろ“次の仕事”だろ?」

腕時計に目を落とした薮ちゃんが席を立った。
夜の仕事に向けてはある程度準備も必要だ。
山盛りのご飯を頬張り続けるいのちゃんに代
わり、玄関先まで見送った。

“ バタン ”

扉が閉まればまた静寂。
薮ちゃんが去った途端、夜が深まった気が
して気が重くなる。
抗う様にペタペタとスリッパの音を響かせて
みたけど、間抜けな音が夜の帷に呑み込まれ
ていくだけだった。


食器を洗う俺の後ろ、ダイニングテーブル
に座ったいのちゃんが食後のお茶を啜っている。
オレンジ色の灯り照らされたいのちゃんの
綺麗な横顔。
これから男に抱かれる彼は、どんな顔をする
のだろう。
どんな声で鳴くのだろう。
天井の軋む音しか知らない俺には分からない
ことばかりだ。


「……なぁに? 」

俺の視線に気付いたいのちゃんがこてっと
首を傾げた。

「…………いのちゃんてさ、何で
“ 夜の仕事 ” してるの?」


「建築士だけじゃ食べていけないから。」

淀みなくにこやかに答えるいのちゃん。


「じゃあ、何で “ 昼の仕事 ”してるの?」


「………表の世界と繋がっていたいから。」


いのちゃんがポツリと溢した本音。
俺は、大した反応も出来ずに閉口してしまう。
いのちゃんがどんな顔をしているのか、視線
を合わせる事が出来ない。


「……なぁんて 笑

俺のは趣味と実益を兼ね備えた副業なん
だから、涼介は気にしないで。」

ポンっとひとつ俺の頭に触れてから、いのち
ゃんは暗い廊下に消えた。

気にしないで……か。

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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀`)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん!ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした!この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…(笑)素敵なお話ありがとうございました! (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀`)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな?なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です!また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年8月30日 20時

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