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いのちゃんは、俺の首に腕を回して
顔を埋めたままぐすぐす泣いた。
その姿は、いつだったかテレビで見た
迷子と母親の再会を思わせた。
涙するのは母親の方、迷子はひたすらに謝る。
柔らかな髪が肩口をくすぐり、露になった白
肌がぴとりとシャツ越しに触れ合う。
いつもなら直視出来ない光景も、目の前で震
える細い背中を前にしてはただ強く抱き締め
る他に正解などある訳が無い。
なぐさめ、しゃざい、よくぼう、あいじょう、
かんしゃ、あきらめ、どうじょう……
あらゆる感情が入り交じった果てに、何故だ
か素直にいのちゃんを抱き締めることが出来た。
俺のために泣いてくれて、
ありがとう。
暫くの間、再会の抱擁に浸っていたいのちゃ
んが何かを気にする様に身体を起こした。
「……涼介、今何時？」
“裏の仕事”が染み付いた身体は、夜の空気に
敏感に反応する。
チラリと盗み見た腕時計は、20時近くを指し
ていた。
「今日のお仕事は、お休みだって。
……薮ちゃんが、言ってた。」
その名にビクリと肩を揺らしたいのちゃんは
再び俺の胸に身を寄せてくる。
正直、薮ちゃんの話は真実を知った今でも現
実からは一定の距離を置いて存在していた。
すんなり名前が出せたのも、多分そのせい。
「………やぶぅを怒らせた俺が悪いの。
この世界で契約違反は、ご法度だから。」
いのちゃんは、俺が知らない響きで“やぶぅ”
と彼を呼ぶ。
それは、二人が過ごしてきた密な時間を思わ
せて俺の胸をざわつかせた。
“ まだ、戻れるんじゃないかと ”
“ あの頃にすがってる ”
薮ちゃんが吐き出した科白が甦る。
いのちゃんも同じなのだろうか。
「……薮、
自分が悪いみたいに話したでしょ？」
いのちゃんは、全てお見通しとばかりにそう
言った。
無言は、それだけで強い肯定になる。
“夜の仕事”を斡旋しているのは、俺。
薮ちゃんは、確かにそう言って眉を下げた。
……あのね、と
いのちゃんが前置きして教えてくれる。
「8年前、“お客さま“を紹介してって
頼んだのは、俺なの。
薮は悪くないよ。断らなかっただけ。」
自ら身体を投げ出して、
男に抱かれているんだよ。
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀｀)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (
レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん！ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした！この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…（笑）素敵なお話ありがとうございました！ (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀｀)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな？なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です！また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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