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*19* ページ19

「俺は、男に抱かれるの好きだよ。
客は大金叩いてでも俺を抱きたい
んだにから利害は一致してる。
それだけ。

涼介がいて迷惑だなんて思った事ないし、
それを気に病む必要もないの。」


俺の両肩にするりと手を回し、諭す様に語り
掛けるいのちゃんの声は柔らかい。
大丈夫だよ“って宥めて、“俺がいるから”と
抱き締めてくれる。
温かくて居心地が良くて甘い香りのする腕の
なかがどうしてこんなに苦しいのか…


いのちゃんは、知っているのだろうか。
俺がこんなに熱くなる本当の理由を。
知っていて、なお俺を引き止めるの?

愛し気に目を細めるいのちゃんが見ている
のは、


俺じゃないのに。



「…………いのちゃんが手に入れたい
のは、俺じゃなくて“あいつ“だろ。


お願いだから、解放してよ……、
俺を、“あいつ“の代わりにするなよ!」



思い切りいのちゃんの腕を払い除けると、
細い身体は簡単にぐらついた。
逃げるように部屋を飛び出した俺の背に果た
してどんな言葉が投げられたのか、

「違う」とも「ごめん」とも「待って」とも
「分かった」とも……もしくは無言も。
どんな答えも聞きたくなくて、両耳を塞いだ
まま夜の街に助けを求めた。


夜は嫌いな筈なのに、どろどろと蠢く心の内
を紛らわせてくれるのもまたネオンが煌めく
そこにしか無いのだから嫌になる。


幾らか平静を取り戻し、僅かに歪む景色の
なか辿り着いたのは5階建のビル。
一階は普通の薬局だが階が上がるにつれその
明かるさは籠ったような妖しい色に変わって
いく。
裏口へ回り、一見すると見落としてしまいそ
うな隅っこの扉を押した。

携帯の充電が切れてしまっていたから連絡を
入れる事が出来なかった。
普段は鍵が掛かっている扉にすがる思いで力
を込めれば、今日ばかり軋んだ音を立てゆっ
くりと動いてくれた。
目の前に現れた無機質な階段を上がっていく。

上がりきった先には、少々レトロな板張りの
また扉。

“ ガチャ “

インターフォンに手を伸ばすより早く、それ
はスッと開いて、迷子の俺を迎え入れてくれた。


「いらっしゃい。

何て顔してるの、涼介。」


いつもと変わらない知念の物言いに、瞼に溜
まった涙が堰をきった様に流れ出るのが分か
った。

*20*→←*18*



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀`)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん!ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした!この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…(笑)素敵なお話ありがとうございました! (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀`)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな?なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です!また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年8月30日 20時

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