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ページ10

……何も無い。


目の前にはただ
真っ白で折れそうな伊野尾の身体があるだけ。
完全に宛が外れた俺は、茫然とその光景を
見つめた。

途端そんな訳ないと妙に焦って、伊野尾を押さえ込んだまま左手で首筋のほくろに触れた。
そこから滑らかな胸元へ探る様に指を滑らせ
目を凝らした。
触れる度、ビクンッと伊野尾の身体が跳ねる。

……やっぱり何も無い。

いくら探しても、そこには俺が思い描いた様な痕跡は見付からなかった。
観念してようやく顔を上げると、

伊野尾は…
ガタガタと震えていた。憐れな程に。
苦しげに浅い呼吸を繰り返し、力なく開かれた瞳からは涙が流れている。

胸元に触れていた指先が冷えていく。
冷水を浴びた様に我に返った。

…俺は、何て事をしたのだろう。

伊野尾が隠し続けてきた、触れてはいけない
痛みに手を掛けてしまった。
それが何かは分からなかったが、目の前で震える伊野尾の姿に取り返しがつかない事をしたのだと悟った。
真っ白な身体にはきっと見えない痕跡が残っている。

俺は、
己の身勝手な欲求で伊野尾を傷付けた…

こんなことしたかった訳じゃないのに。

腕をほどき、身体を離す。
はだけたシャツのボタンを順に一番上まで
留めていく。
元通りにすると、俺は伊野尾から十分な距離をとって離れた。
もう怖がらせたくない。

窓際の壁にずるずる沈み込んだ伊野尾。
俯いているため表情は読めない。

俺はきっと、相当情けない顔をしている筈だ。
大切なものに固執し過ぎて壊してしまった、
力加減も分からない愚か者。

「…ごめん…伊野尾…ごめん…
…ごめん……ごめんなさい」

何度も何度も謝罪の言葉を切り返し、床に額を擦り付けた。
何故だか涙まで溢れてくる。

「…薮…顔上げてよ…
そんな顔しないで……」

さっきまで震えて泣いていた伊野尾が
弱々しく微笑んでいた。
こんな馬鹿な俺のために微笑んでいた。

○→←○



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - unaunaunaさん» ありがとうございます!好きなcpはあるんですがなるべく色々書いてみようと挑戦中です。kthkとか書いてみると意外にしっくりきたり 笑 少しでも楽しんで頂けるよう頑張ります♪ (2016年8月4日 2時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
unaunauna(プロフ) - ぴよさんのお話は素敵なものばかりで短編なのに読んだ後もずっと心に残っています。時に泣きそうになる事も…。カップリングも偏ってなくて珍しいものも多いのに、違和感がなくてすごいです。これからも楽しみにしています。 (2016年8月4日 0時) (レス) id: 69d5b1c889 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - えりささん» 読みましたよ〜完結おめでとうございます!!いのちゃん素敵な誕生日になって良かったぁ☆26歳のいのちゃんも朝から可愛かったですね☆ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
えりさ(プロフ) - やまいのも良き☆わたしの方のいのありもなんとか完結しました。続き楽しみにしてます♪ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 44ca787f52 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» いつもありがとうございます!続編こんな感じで大丈夫でしたか? 書いてみたらやっぱりたのしかったです☆ 私も身長差、年齢差大好きですよ 笑 (2016年6月23日 1時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作成日時:2016年5月29日 23時

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