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9逝く夏の歌(ybin) ページ8

yb

7月。梅雨が明けた夏空はどこまでも高い。
澄みきった青空にもくもく浮かぶ入道雲。
太陽が眩しく校庭を照らし、取り囲む様に
並ぶ青々とした桜の木からはセミの声が
響いていた。

午後一番の授業は退屈な古文。
しかも白髪頭の年配教師は、すっかり自分の世界。
こちらに顔を向けることなく、淡々と教科書に目を落とし授業を進めている。

窓際一番後ろの席に突っ伏した俺は、
そんな夏の景色をぼんやりと眺めていた。
開け放たれた窓から吹き込むのは、
生ぬるく不快な温風。
じわじわと吹き出す汗が額からたらりと流れ落ちた。
ベタベタして気持ち悪い。
眠けさえ吹き飛んでしまう様な夏の暑さ。
教室内へ視線を戻すと、皆シャツの衿元を大きく開けて、風を送り込みながら授業の終わりを待っている。

俺は、教室のちょうど真ん中で授業を受ける
茶色く丸い後ろ姿に目をやった。
姿勢を正し、真面目に授業を受けている。
耳まですっぽり隠れた髪型が今の季節には
いささか暑苦しい。
でもそれ以上に違和感を感じるのは、
彼の制服姿だった。

長袖の白シャツ。
袖口を捲ることも無く、衿元は第一ボタンまで
きっちり留められていた。
それでいて、この暑さのなか汗も流さず、
涼しげな表情は崩さない。
真っ白な肌は、太陽に照らされたことなど
無いように透明だった。

彼…伊野尾慧は、この暑さのなか
常に長袖を決め込んでいた。
夏服に衣替えをしておよそ2ヶ月。
梅雨時は寒さから長袖やカーディガンを羽織る生徒も多かった。
しかし、梅雨明けと同時に訪れたうだるような暑さの前でその姿は、異質に写る。

…去年もだ。

伊野尾は去年の夏も一度として肌を見せることはなかった。
プールは見学、泊まり込みの勉強合宿は欠席…
1000人を越える男子校でわざわざ地味な
伊野尾のそれに気付く者はいない。

でも俺は知っている。
決して半袖を着ないこと。
決して素肌を見せないこと。
決して人と触れ合わないこと。

…伊野尾が綺麗な顔をしていること。

それが何を意味するのか確かめたい。
そんな衝動を抱えて
俺は、今日も彼を見つめていた。

○→←☆☆☆



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - unaunaunaさん» ありがとうございます!好きなcpはあるんですがなるべく色々書いてみようと挑戦中です。kthkとか書いてみると意外にしっくりきたり 笑 少しでも楽しんで頂けるよう頑張ります♪ (2016年8月4日 2時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
unaunauna(プロフ) - ぴよさんのお話は素敵なものばかりで短編なのに読んだ後もずっと心に残っています。時に泣きそうになる事も…。カップリングも偏ってなくて珍しいものも多いのに、違和感がなくてすごいです。これからも楽しみにしています。 (2016年8月4日 0時) (レス) id: 69d5b1c889 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - えりささん» 読みましたよ〜完結おめでとうございます!!いのちゃん素敵な誕生日になって良かったぁ☆26歳のいのちゃんも朝から可愛かったですね☆ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
えりさ(プロフ) - やまいのも良き☆わたしの方のいのありもなんとか完結しました。続き楽しみにしてます♪ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 44ca787f52 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» いつもありがとうございます!続編こんな感じで大丈夫でしたか? 書いてみたらやっぱりたのしかったです☆ 私も身長差、年齢差大好きですよ 笑 (2016年6月23日 1時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作成日時:2016年5月29日 23時

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