○fin ページ6
俺は、高級なタワーマンションにいた。
伊野尾君に教えてもらった知念君の家。
どうしても出られない伊野尾君に代わって
知念君の様子を見に来たのだ。
「高そうなとこ住んでるなぁ…」
エレベーターを降りると指定された部屋へ向い
インターフォンを押してみた。
……反応が無い。
“昨日ずっと顔色悪かったんだ”
伊野尾君の言葉が甦り、心配になった俺は、
カードキーを差し込み部屋へ入った。
長い廊下の先にあるリビングから灯りが漏れている。
「お邪魔します…知念君？」
声を掛けながら覗き込むと…
広すぎるリビングの大きなソファーで
ひとり丸くなる小さな小さな知念君がいた。
「えっ…雄也…なんでっ…コホッッ」
コホンコホンと咳をしながら、俺を見上げる。
丸く黒目がちな瞳は苦しさから潤んでいた。
額に手を当てると酷く熱い。熱もある。
「伊野尾君に頼まれて、様子見に来たの。
もう大丈夫だよ…」
なるべく優しく声を掛けながら震える身体を
抱き締めた。
背中を撫でてあげると咳が次第に収まってくる。
ガラリと広いこの部屋で一人苦しさに耐えていたのかと思うと、腕の中の小さな温もりが愛しくて仕方なかった。
俺を変えてくれた知念君の強さ。
でも、本当は一人が寂しくて、温もりが欲しくてたまらなかったんだよね。
最初に会った日の帰り際 “またね”
と言った顔は確かに泣きそうに歪んでいた。
いつの間にか俺は、その泣き顔に囚われていたんだ。
腕の中、顔を上げた知念君の頬は赤く蒸気し
ている。
薄い可憐な唇を僅かに開き、ねだる様に囁いた。
「雄也…キスしてぇ…」
熱あるのに…
僅かに残った理性が崩れる音がする｡
ぴったり合わせた唇は驚く程に熱かった。
もう抑えられないよ…
案の定、風邪が伝染った俺は高熱に苦しみ
5日ぶりに伊野尾君の店を訪ねた。
時刻は19時。早めに退社した。
店に入るといつもの席に伊野尾君と
まだいる筈のない…知念君がいた…。
二人ぴったり並んで座り、随分と盛り上がっている様子。
「…あれ？知念君もう来てたの？」
伊野尾君はにやにやしながら俺を振り返る。
「ちょっと雄也〜風邪ひいてる子に
何てことするんだよ〜！」
…全部バレてるのか。
「ごめんね〜雄也。いのちゃんは、
協力してくれてたから報告しちゃった。」
…協力？どういう事？
「ふふふっ、知念はねぇ推薦で
もう大学合格してるんだよ。」
「僕、天才だからね！」
にやりと綺麗に笑う口許。
悪魔みたいに賢くて寂しがり屋な可愛い恋人。
(fin)
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ぴよ(プロフ) - unaunaunaさん» ありがとうございます！好きなcpはあるんですがなるべく色々書いてみようと挑戦中です。kthkとか書いてみると意外にしっくりきたり 笑 少しでも楽しんで頂けるよう頑張ります♪ (2016年8月4日 2時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
unaunauna(プロフ) - ぴよさんのお話は素敵なものばかりで短編なのに読んだ後もずっと心に残っています。時に泣きそうになる事も…。カップリングも偏ってなくて珍しいものも多いのに、違和感がなくてすごいです。これからも楽しみにしています。 (2016年8月4日 0時) (レス) id: 69d5b1c889 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - えりささん» 読みましたよ〜完結おめでとうございます！！いのちゃん素敵な誕生日になって良かったぁ☆26歳のいのちゃんも朝から可愛かったですね☆ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
えりさ(プロフ) - やまいのも良き☆わたしの方のいのありもなんとか完結しました。続き楽しみにしてます♪ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 44ca787f52 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» いつもありがとうございます！続編こんな感じで大丈夫でしたか？ 書いてみたらやっぱりたのしかったです☆ 私も身長差、年齢差大好きですよ 笑 (2016年6月23日 1時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよ
| 作成日時：2016年5月29日 23時
