この世の欲しを花と云う(続 jump×jump)

○ ページ30

ym

「へ〜そんな綺麗で可愛い娘いるんだあ！
いいなぁ！！俺も見てみたい！！！」

昼時、混み合った学食に響く裕翔の大きな声。
その横で知念が恥ずかしそうに“しーっ”と
人差し指を立てる。

「ごめん、ごめん…。
圭人の話聞いてたらつい興奮しちゃった。」

裕翔は、一転声を小さくして知念に詫びる。

「ごめんね、ちぃちゃん…。
でも、ホントに綺麗で可愛い子達なんだよ。」

裕翔の向かいで圭人までが申し訳なさそう
に眉を下げている。
今日は一限目から必須科目が入っていて
朝が早い憂鬱な日。
前日のバイト疲れが残る気だるい身体で
講義室へ向かう。
既に来ていた裕翔と知念が一番後ろの席
から手を振った。
それぞれにまだ覚醒しきっていない様子。

「…おはよ……眠いんだけど…
必須が一限とかマジないわ……」

「僕も遅くまでゲームしてたから
眠いよぉ……」

「おはよう！！
山ちゃん、ちいちゃん、裕翔！
今日も良い天気だね〜♪」

不満たらたらな俺達だったが、その直後
やたらと元気で楽しそうな圭人が現れた。
にこにこ笑顔で足取りも軽い。
講義中突っ伏して眠りこける俺の隣で
圭人が軽快にシャーペンを走らせる音が聞こえていた。

「圭人は、木曜日いつもご機嫌だね。
何か良いことでもあるの？？」

一番人気のカレーを口に運びながら
裕翔が切り出した。
その横で知念もうんうんと同意している。
一瞬目を丸くして驚いた様子の圭人は

「えっ…俺そんなにご機嫌？
……あぁでもそれは多分…………」

と電車で見掛けるという綺麗で可愛い
“3両目二人”の話を始めた。
そして…冒頭へ戻るって訳。

「じゃあさ、圭人はどっちの娘がタイプ
なの？？
綺麗な娘？可愛い娘？」

「……えっ？？」

楽しそうに続けた裕翔に圭人は少し戸惑っ
た反応をした。
そりゃそうだろ…。
圭人の隣で終始無言でラーメンを啜って
いた俺は、口を開かずにはいられなかった。


「…それ…女の子じゃなくて男の子。
しかも…男の子でもなく“男“の話。」

圭人が木曜日の朝出会う“綺麗で可愛い二人”
それは、俺達と同じ成人男性の話だから。

「……へ？？」

口をあんぐり開けて馬鹿みたいな顔をした
裕翔と知念がそこにいた。

…ほらやっぱり、そうなるよね…

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