この世の欲しを花と云う(続 jump×jump)

12優しい世界(kthk) ページ29

kt

大学2年生になって3ヶ月。
俺の木曜日は朝が早い。
7時15分発各駅停車は都心まで30分。
始発の駅で待つ車輌に発車ギリギリで
乗り込んだ。

１年生の時は、一限を入れず授業を選択
していたが今年は必須科目が入ってしまった。
木曜日は一限から。
少し早めの電車に乗らなくてはならない。
比較的人が少ない3両目。
手前シートの一番左側。
いつもの場所に腰を下ろして一息ついた。

…今日もいる…

向かい合うシートの一番右側。
対角線上に並んで座る二人の姿。
並び方もいつも一緒。
向かって右側に綺麗な子、左側に可愛い子。
綺麗な子は、ロングTシャツにリュック姿で
カジュアルな感じ。
可愛い子は、シャツにカーディガンそして
トートバッグという綺麗めな格好。
外見と少しチグハグなのがまた良い。

綺麗な子は、足を組んで雑誌を読んでいる。
可愛い子は、隣のその子に寄り掛かって
眠っているみたい。
いつもと同じ木曜日の光景。


2年生になり初めて乗る様になったこの電車。
何気なく駆け込んだ3両目で“あの二人”を
見つけてからというもの、それは木曜の朝の
密かな楽しみになっていた。

この日しか乗らない電車なので、あの二人が
毎日乗っているのか、木曜だけなのか…
はたまたいつも一緒なのか違うのか…
俺は何も知らない。
でも、毎週木曜日この車輌に間違いなく二人は
座っていた。

別々の事をしていても気にならない様子や
寄りかかる身体を自然に受け入れている様
からすごく仲が良いんだろうなと感じる。

全然知らない子をそんな風に思うのは少し
変かもしれないけど…
仲良く並んで座る綺麗で可愛いその姿に俺は、
何故か幸せな気持ちになるのだった。

都心に近づくにつれ、混み合ってくる車内。
除々にシートの前に立つ人が増えてきて
二人の姿は見えなくなる。
終点の二駅前で、停車するホームから改札へ
向かう後ろ姿を確認して今週もおしまい。
終点に着くと、我先にと車輌を出る人波に
流される様に席を立つ。

…よしっ！今日も頑張ろう！

木曜日の朝は何故かいつも晴天だ。

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