この世の欲しを花と云う(続 jump×jump)

○fin ページ27

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「……で、薮と知念君はゴールイン
しちゃった訳！！
今日も二人で横浜デートだって。
いいな〜羨ましいね〜♪」

ビール片手に上機嫌で、夏季講習中の
向こうでの出来事を話す光。
無事一ヶ月の任期を終え帰って来た光と
俺、そして山田は居酒屋にいた。

「しかし、びっくりしたよ！
知念君が山田君と同期の子だったなんて！」

“世間は狭いね〜”等と呑気な光。
そんな光に相槌を打ちながらにこにこ
笑顔の山田。
…俺は、閉口していた。
光よ…そんな偶然ある訳ないだろうよ。

トイレに立った光の姿が見えなくなるのを
確認して俺は、山田に向き直った。

「…山田…お前って奴は…
同期の親友を薮に売るなんて…
おぉ…恐い恐い！！」

“俺に任せて”なんて言っていた山田の笑顔
を思い出し思わず身震いする。
薮…可哀想に。
まんまと術中に嵌まったであろう薮に同情
を禁じ得ない。

しかし、俺の冷たい視線を受けた山田は
心外とでも言う様に反論してきた。

「いやっ待ってよ！何その顔！
俺だっていくら何でも親友を売ったり
しないからね！！

確かに、納品担当が知念だったから
光君と薮君の様子伺ってきてって
頼んだけど…
…知念人見知りだし、知らない人と
なんて打ち解けられないって断られ
てたんだよ。

しかも、薮君との話だって今日初めて
聞いたんだから…」

首を傾げながらぶつぶつ文句を言う山田。
…………そういう事か。

「山田…お前恋のキューピッドだわ。」

呆れた調子で声を掛けるけど鈍い山田は
更に首を傾げた。

「…？意味分かんないんだけど？？」

これ以上は無意味と判断した俺は、
山田の質問を無視して鞄から小さな小瓶
を取り出した。
本題はこっち。

「こないだの話。
やっぱ色々試してみたけどこれが一番
効果あるな。 長く続くし。」

今度は、山田が心底呆れた顔で俺を見る。


「…試したって何？どういう事？？」


「そんなの自分で使ったに決まってるだろ！
効果絶大だったぞ。一晩中だ。」

ふんっと自慢気に胸を張る。
自分で試すのが一番だろうが。
さぁ光が戻ってくる前にさっさとビール
に混ぜてしまおう。

「…だから自分をもっと大事にしてよ。」

小瓶を空ける俺の手をぎゅっと握って
山田が言った。



ーみんな無自覚。みんな幸せ。それで良し。ー

(fin)

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