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○fin ページ20

そこまで話すと薮君は、窓際へと移動した。

「3年前に光の両親から自宅を手離す
話を聞いた。
光と過ごした場所に留まっているのが
辛くて耐えられないからって。
それを聞いた伊野尾は、あそこに…
光の家に住むって言い出して…

生前、光を信じられなかった分
これからはずっと一緒にいてあげるって
今もたった一人で過去に向き合ってる。」

俺は、今すぐいのちゃんのもとへ駆け出し
たかった。
いのちゃんを抱き締めたかった。
一人で罪を被ろうとする馬鹿ないのちゃん
を救いたかった。
でも…その前確かめなくっちゃ。

「……薮君……
薮君は、全てを知っていたのに…
どうして……どうして……
いのちゃんに光君の思いを伝えなかった
の?」

「…………っ裕翔…ごめんっ……
俺は…俺も…“光を愛していたんだ”
光が伊野尾のもとへ去るのが…
怖かったんだよ……」

あぁ、薮君だって大馬鹿者だ。
光君もいのちゃんも俺も皆。
大切なものが何か分かっていたのに
どうして、どうして苦しむのだろう。


夕暮れの商店街を息もつかずに駆け抜ける。
インターホンに反応が無いので、ドアノブを捻ると鍵は掛かってないなかった。
リビングを抜けて、二階へ続く階段を昇る。
廊下の一番奥、部屋の扉が開いていた。
足を踏み入れると…そこは
おそらく光君の部屋。
ベッドや本棚、洋服までもが当時のままに残されていた。

いのちゃんは、
大きな窓の前にぼんやり立って外を見ている。
茶色く丸い後姿はピクリとも動かない。
窓の向こうに深緑の葉を繁らせた木が枝を
伸ばしていた。

「…裕翔…来てくれたんだ…
ほらっ見てごらん。枇杷の木だよ。
この枇杷の木は4年前から実をひとつも
付けなくなった。
俺、枇杷が好きだから光がよく採って
きてくれてたんだ。
あの日も…光は枇杷の入った袋を
抱えてた…。

俺が…光を信じることが出来なかったから
だから…光は死んじゃったのかな…」

いのちゃんは、今も過去と現在の境界線に
立っている。
たった一人自分を責めて、そこから動け
ずに立ち尽くしている。

「…いのちゃん!!

駄目だよ…光君が泣いてるよ!!
そんな顔しないでって……」

俺は、いのちゃんを後ろから抱き締めて
窓際から腕の中へ引っ張りこんだ。
見えない境界線から引き離すみたいに。
震える身体を強い力で包み込み
もう二度と戻っていけないように
深く深くもっと深く口付けた。

ー大切なものは、いのちゃんだけ
もうどこにも行かないでー
(fin)

☆☆☆→←○



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作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - unaunaunaさん» ありがとうございます!好きなcpはあるんですがなるべく色々書いてみようと挑戦中です。kthkとか書いてみると意外にしっくりきたり 笑 少しでも楽しんで頂けるよう頑張ります♪ (2016年8月4日 2時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
unaunauna(プロフ) - ぴよさんのお話は素敵なものばかりで短編なのに読んだ後もずっと心に残っています。時に泣きそうになる事も…。カップリングも偏ってなくて珍しいものも多いのに、違和感がなくてすごいです。これからも楽しみにしています。 (2016年8月4日 0時) (レス) id: 69d5b1c889 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - えりささん» 読みましたよ〜完結おめでとうございます!!いのちゃん素敵な誕生日になって良かったぁ☆26歳のいのちゃんも朝から可愛かったですね☆ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
えりさ(プロフ) - やまいのも良き☆わたしの方のいのありもなんとか完結しました。続き楽しみにしてます♪ (2016年6月23日 9時) (レス) id: 44ca787f52 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 夏夢さん» いつもありがとうございます!続編こんな感じで大丈夫でしたか? 書いてみたらやっぱりたのしかったです☆ 私も身長差、年齢差大好きですよ 笑 (2016年6月23日 1時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作成日時:2016年5月29日 23時

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