＊ ページ11
「採掘されたなかに少しだけ紛れて
るんだよ。集積されちゃえば他の石
と何にも変わらず粉々にされて終わり
なんだけど。」
何故だか得意気な口調になる。
初めてこの“宝石”を見付けた時の妙に誇ら
しい気持ちを思い出す。
地元の子供達にとっては馴染みの事実で取り
立てて珍しいものでは無いと後になって知っ
たのだけれど。
紫だけじゃない、緑や青、様々に色味の違う
それを俺は夢の国のお土産に貰った空き缶に
大切にしまいこんでいた。
部活が忙しくなると夏休みの長期の帰省は難
しくなる、次第に遠退いた祖父母の家。
あの宝箱は一体どこへいったのか。
朧気に形を震わせ失われていったあの頃の思い出が今確かに手のひらに存在している。
不思議な気分だった。
浮かされたまま俺はそれをそっと会計用の木
箱へ入れようと手を伸ばした。
「‥‥だいちゃん、それ俺にくれない？」
涼介の指先がそっとそれを制する。
「‥え、と、これが欲しいの？」
美しいとは言え所詮はただの石だ。
自身が宝石の如き美しさを湛える涼介に釣り
合う代物とは思えなかった。
それにこれは単なる“俺の思い出“でしかない。
「それと引き換えに卵は俺が買うよ。
そんなにたくさんの卵が必要って事は
大方お昼はオムライスってとこだろ。
だったらこのマリネも付けとく。
野菜もちゃんと取らないと光君あたり
が意外にうるさいから。」
戸惑う俺を制する様に涼介は矢継ぎ早に告げ
ると手早く代わりの何かを会計箱へと投げ入
れた。
続けて手にしていた紙袋からマリネの入った
容器を手渡す。デパートのデリみたいにお洒
落で綺麗な代物だ。
「俺も少しだけ出店してるの、
まぁ本業は他にもあるから簡単なお
惣菜みたいなものだけど。」
どうやら涼介はこのマーケットに自らの商品
を並べに来ていたという事らしい。
「ありがとう、何だか悪いな。
こんな子供騙しみたいなもの‥」
どう考えても対等な物々交換が成り立つとは
思えなかったけど俺は希望に倣い涼介の手の
ひらに光る石を乗せた。
太陽の光を受け内側の紫が尚一層キラキラと
輝く。
「‥‥綺麗だな、灰色の内側にこんな
に輝きを隠してる。自然が作った正に
真の宝石だと思うよ。
ありがとう、じゃあまた。」
涼介はひらひらと手を振る。
いつの間にか降り注ぐ蝉の鳴き声が聞こえる。
また季節が変わったのだろうか。
「‥‥ぁ、」
すれ違い様に最も間近で見た彼の瞳は、
左右違う色をしていた。
終わり
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ぴよ(プロフ) - coさん» coちゃんコメントありがとうございます＊掴みどころの無い不思議な世界で一見普通にでも奇異に存在する彼等を表現したいなと思って書いています。うまく表現出きるのか‥楽しく挑戦できたらなと☆ (2020年8月19日 0時) (
レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
co(プロフ) - きゃらきゃらと笑いあうinとhk。何処にも属することのない（俯瞰する？）大ちゃん。夏の暑い夜に涼風が立つようなお話、楽しみにしています(^ ^) (2020年8月17日 0時) (レス) id: 1fe03fc97a (このIDを非表示/違反報告)
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