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「……ひかる君から？」
「はい、ほらこちらです。綺麗ですよね。」
当然に事情など知らない彼は大陸特有の綺羅びらかな色合
いで飾られた缶を差し出し、ころころとした笑顔を見せた。
蓋を開ければこれまた様々に彩られた焼き菓子がいっぱいに
収められている。
「あちらのお茶と合わせるととても美味しいのです。
この缶はあまりに綺麗なので空になったら私が戴ける
ことになりました。」
彼には可愛らしいものを収集する癖がある、とこれは
高木さんに聞いたことがある。
そうやって何かを探し続けているのさ、とこれは薮先生
の言葉だか真意は勿論分からなかった。
嬉しそうな様に流されそうになりながら、本来の目的を
切り出しす。
「今日ここを訪ねたのはね、ひかる君を探してなんだ。
“先日”と言っていたけどそれはいつの話だい？」
「……確か２日前です。支那からの大型船は日曜
に帰港するのでその足でこちらに寄られたの
だと思います。私と社長の他は誰も居ませんで
したから。」
身寄りの無い彼は急な来客の応対も兼ねて社屋内の一室で
寝泊まりをしている。高木さんは相変わらず休み等関係無く
忙しく働いている様だ。
ここまで社屋が立派になったのも、まず世の風を読むという
変わらぬ指針に拠るものであろう。
「荷物などもそのままで、しかし今回は大陸への
渡航だったので欧州の比では無いよと仰ってい
ました。支那は不思議な文化や風習がたくさん
で何度行っても飽きないとも。
現に今回の旅行記もとても面白いものが書けたと
お話されていましたから。私もひかる先生の一読
者として楽しみなのです。」
目を輝かせながら彼は言う。
俺はやはり、とあの編集者の確信に頷いた。
「…ひかる君は原稿を書き上げていたということか。
ありがとう、今日はちょっと時間が無いものだ
から高木さんには宜しく伝えてくれるかい。」
「分かりました。
ひかる先生はその足で原稿を送るのだとも
仰っていましたが、どうしたものでしょう。
郵便局ならここを出て直ぐ港の向かいにある
のですが。」
彼に辞して再び潮風に吹かれる。
今日はどこまでも良い天気だ。
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ぴよ(プロフ) - 梨乃さん» 梨乃さん長い間本当にありがとうございました。何度も読み返したくなるお話を書きたいと思ってきたのでとても嬉しいです。終らせてしまうのは私自身にも寂しさがあったのですがお話もいっぱいになりちょうど頃合いなんだろうなという気持ちです。 (2023年2月5日 12時) (
レス) id: e4c9d3b3cb (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - 6年前初めてこのサイトで読んだ作品が浪漫廻廊でした。ぴよさんの紡ぐ言葉が美しくて、何度も何度も読み返したとても印象深い作品です。素敵な作品と出逢わせていただき本当にありがとうございます。 (2023年2月5日 0時) (レス) id: 74d5f2a7dd (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - けーままさん» けーままさんありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです。ずっとずっと私の頭の中にも懸命に生きる彼等が見えますよ⭐ (2023年1月27日 13時) (レス) @page47 id: e4c9d3b3cb (このIDを非表示/違反報告)
けーまま(プロフ) - ぴよさんの文章は本当に素敵です。何回も読み返す度に頭の中で彼等が生きています😌 (2023年1月26日 20時) (レス) @page46 id: 3a21aa44cd (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 遅くなりました。夏夢さんお元気でしたか？コメントありがとうございます。世界が動いた時にはまた共有したいなと思いながらもご無沙汰しております。穏やかにありたいですね。 (2023年1月25日 13時) (レス) @page45 id: e4c9d3b3cb (このIDを非表示/違反報告)
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