＊ ページ14
次に目覚めた時、室内は真っ暗
で僕と先生はまたいつものソフ
ァーで眠っていた。
喉が少し痛い、最初は気だるかった事後も
今となってはすんなりと起き上がれる程に
慣れてきてしまった。
確かに先生の膝上は、僕の寂しさを
紛らわせてくれるけど、
寝息をたてる先生の腕枕から抜け出して、机
の引き出しの一番奥を探ると束になった海外
郵便がカサカサと音をたて指先に触れた。
そっと取り出し、長い旅路を経て辿り着いた
であろう便箋を捲る。
本当に知りたいのは、あなたが彼と
交わす言の葉の正体なのだ。
一枚目は真っ白、二枚目には英国で見た景
色や絵画、町並みの様子がひかる先生らしい
饒舌な文章で綴られている。
健全な内容にいくらか拍子抜けした僕が
三枚目に指を掛けたその時、
「……起きていたのかい？」
背後から優しい声がして、先生はそっと
僕から“それ”を取り上げた。
咎めることなく、形の良い唇で薄く笑って
さえいる。
「……先生は、何のために
世の不思議を追うのですか？」
この世は分からない事ばかりだと
いつだか先生は言っていたけれど、
ならばまた知らぬままに生きる道も
存在しているのではないでしょうか。
三枚目以降にしたためられた
「知念は真意をついてくるね、
それは難しい質問だな。
俺にも分からない事はある。
いや、分からない事ばかりだ。
しかし、探偵である以上“依頼人“から
引き受けたのならそれはやはり知らなく
てはならないのだろうね、」
僕が目にしたのは、
ある医者の生い立ちだった。
……
……
「やぁ、いらっしゃい。
どうだい、仕事は順調かい？
知念なら今日もひと探しに出ているよ。」
なるほど事務所内には、背の高い男と
たゆたつ煙草の香りだけ。
俺にとっては好都合だ。
雄也の会社で働いて僅なながらようやく
手元に準備した依頼金。
軽く指先で爪弾いて目の前の探偵は、
また細長い煙を吐き出した。
「まぁ、ちょっと少ないけど涼介の
依頼なら破格で引き受けようじゃないか」
英国へ周遊に出たひかる先生。
この期を逃してはきっと辿り着け
ないままだ。
「何故圭人は、かつて英国に渡り、
“法外な医者“となったのか。
俺はその真実を知りたいんだ、先生。」
続
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ぴよ(プロフ) - 梨乃さん» 梨乃さん長い間本当にありがとうございました。何度も読み返したくなるお話を書きたいと思ってきたのでとても嬉しいです。終らせてしまうのは私自身にも寂しさがあったのですがお話もいっぱいになりちょうど頃合いなんだろうなという気持ちです。 (2023年2月5日 12時) (
レス) id: e4c9d3b3cb (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - 6年前初めてこのサイトで読んだ作品が浪漫廻廊でした。ぴよさんの紡ぐ言葉が美しくて、何度も何度も読み返したとても印象深い作品です。素敵な作品と出逢わせていただき本当にありがとうございます。 (2023年2月5日 0時) (レス) id: 74d5f2a7dd (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - けーままさん» けーままさんありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです。ずっとずっと私の頭の中にも懸命に生きる彼等が見えますよ⭐ (2023年1月27日 13時) (レス) @page47 id: e4c9d3b3cb (このIDを非表示/違反報告)
けーまま(プロフ) - ぴよさんの文章は本当に素敵です。何回も読み返す度に頭の中で彼等が生きています😌 (2023年1月26日 20時) (レス) @page46 id: 3a21aa44cd (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 遅くなりました。夏夢さんお元気でしたか？コメントありがとうございます。世界が動いた時にはまた共有したいなと思いながらもご無沙汰しております。穏やかにありたいですね。 (2023年1月25日 13時) (レス) @page45 id: e4c9d3b3cb (このIDを非表示/違反報告)
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