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結婚しよう、と

言うべきだろうか。

"櫻井くん、決まったよ。おめでとう"

さっき、部長の部屋に呼ばれ告げられた。

Aは

俺の野心も功名心も

理解して後押ししてくれるだろう。

それでいいのか？

自分さえ夢を叶えられたら、それでいいのか？

Aがどうしたいのか、俺はちゃんとわかっているのだろうか。

自問自答しながらデスクに戻ると、

"本部栄転おめでとうございます"

と、マグカップに小さな付箋が目立たないように貼られて、コーヒーが注がれていた。

仕掛け人は、外商部事務の恩田さん。

小柄で可愛らしい彼女を狙っている野郎はたくさんいる。

おまけに愛想もよく、気が利くとくれば、誰だって狙いたくもなる。

翔「恩田さん、コーヒーありがとう」

彼女の席を通るときに、コーヒーのお礼を小さな声で伝える。

その足で喫煙室に向かうと、ガラス戸の中に同期の二宮を見つけた。

翔「おつかれ」

和「翔ちゃん、おつかれ」

ふーっと、2人して紫煙を吹き出すと、ニノから切り出してきた。

和「で、行くんでしょ？ロンドン」

翔「うん、行くよ」

和「だよね......Aは、、、」

翔「ん？」

和「連れていくの？」

ニノの薄茶色の瞳が

俺の迷いを見透かすように見つめていた。

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