■□モノクロ□■ (ページ20)

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仕事が終わって、彼と待ち合わせた場所へと歩く。

社ビルから歩いて5分。

彼と私のお気に入りのレストラン。

店に向かう途中、夕焼けから夜の顔へと色を変える空に、ぽわんと浮かんだ月。

彼との最後のディナーを、見守ってくれているみたい。

レストランのドアを開けると

「いらっしゃいませ櫻井さま」

顔馴染みのディレクトールが席に案内してくれる。

『実は、私が櫻井の予約で来るのは、今日が最後になりそうなんです』

小さな声でそう告げると、

「櫻井さま、ロンドンへ栄転だとか。残念です」

色々と察しての、無難な受け答え。

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翔「ごめん、遅くなった」

私から遅れること5分。

久しぶりに彼の顔を正面から見た。

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食事がほぼ終わって、コーヒーが運ばれてきて

それをひと口飲んで、彼が切り出した。

翔「A...ロンドンには、、、別の人を連れて行こうと思う」

『うん、やっと話してくれたね』

翔「ごめん」

『んーん。私も自分から聞けばよかったの』

彼は、なんとも言えない複雑な表情をしていた。

『お店、出ない？このお店好きだから、別れ話の思い出を作りたくない(笑)』

私は、私の精一杯で笑う。

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