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「俺、ロンドンの本部に異動になるかも。」

お風呂上がりの一本の

プルトップを勢い良く開け、おいしそうに喉を鳴らす彼の、ビールを飲むときのゆるんだ笑顔が好き。

『すごいじゃない！もちろん決まれば行くんでしょ？』

彼が、完全なるワーカホリックであることはわかっている。

忙しければ忙しいほど楽しそう。

むしろ忙しい自分に酔いしれている。

そんな彼に、出世欲がない訳が無い。

知っている私は、それを止める気は全くない。

シャンプーや洗剤の大手メーカーに勤務している私たち。

彼は将来を有望視されている外商部のエース。

私は、念願叶って広報部に所属している。

つき合い始めて、そろそろ4年が経つ。

すっかり彼に感化された私は、彼と同じくらいワーカホリックになりつつある。

同じ会社の、違う部に所属している私たちは、参加しているプロジェクトが違えば、社内で話すことはほとんどなく、

週末にどちらかの家で過ごすこの時間が、コミュニケーションの中心。

「決まれば、そりゃあ行くよ。一応、それを目標にしてたし。」

私は。

"行かないで"と

言えないオンナ。

かわいい女になれない、かわいそうな女。

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