80話 ページ38
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髪を払い終わったのか、Aは少し落ち着かない様子で前髪を触ったり、横の毛先をつまんだりしていた。鏡越しに見えるちょっと気の抜けた顔がなんとなく面白い。
Sh「もっと切りたかったら店でやったほうがいいよ。このくらいなら俺がやってもいいけど」
『…!』
鏡を見てたAが驚いた様子でこっちに振り返った。
なんだ?今驚くとこあったか?
Sh「なに?」
『…ううん、なんでもない』
Sh「そうか?ここ片付けておくからBroooockのとこ戻ってろよ」
『うん』
Aが去っていくのを見送って片付けを始める。
だがその瞬間、急に疲れがどっと出て思わずその場にしゃがみ込んだ。…慣れないことしたからか?
リビングの方からおー!!いいじゃん!と歓声が聞こえた。
「Aちゃんかわいすぎるんですけどー!!」ってBroooockの興奮した馬鹿デカい声まで聞こえる。思わずフッと笑みが漏れた。
やっぱりアイツ相当惚れ込んでるよな。本人は自覚あんのかな。これからどうすんだか。
Aをここに置いておくことに俺は反対派だったが、別にAが嫌とかじゃない。
ここにいてもAのためにならないんじゃないか、と思ったからだ。
だが、この家に住み始めてから、最初の頃よりAは少し明るくなった。
笑いはしないものの、表情の変化が見られるようになった。いや、笑いはしたのか?みんなでカレー食べた時みたいにちょっとでも笑えばいいのにな。アレ、本人は自覚なかったらしいけど。
まぁ、ここにいて悪いことはなかったんじゃないかって実は安心してるんだ。
Sh「…どう転ぶかって誰にもわかんねぇもんだな」
BroooockとAが今後どうしていきたいか、どうなっていくのか、俺にはわからない。
でも、次こそは何があっても、俺は最初から二人の味方でいたいと思う。
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作者名:おやすみこ | 作成日時:2022年2月24日 10時