50話 ページ1
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——————コンコン。
『………ん、…？』
机を叩く音で目が覚める。
重たい頭を上げると、長い前髪の隙間から紫色の瞳が私を見下ろしていた。スマイルさんだった。
『…ぁ』
Sm「よぉ。飯食ったか」
『はい』
Sm「ホントか？きりやんがお前全然食わないって心配してたぞ」
『そうなんですか』
Sm「アイツなんだかんだで世話好きだからな」
言われてみればそうかもしれない。
最初は全く歓迎モードではなかったけど、今ではなんだかんだ面倒を見てもらってる感じがする。相変わらず気まずさはあるけど…。
Sm「お前に聞きたいことあんだけど」
スマイルさんは声のトーンを落として、Broooockの席に座った。
机に両肘をついて細長い指を顔の前で絡める。そのポーズはなんだかさまになっていた。
Sm「まぁそんな聞きたいってほどじゃないけど。……お前は根無草って知ってるか？」
『ねなしぐさ…？』
Sm「名前の通り、根がなくて水面に浮いてる草のことをいうんだがな。もう一つ意味があって、 その浮き草みたいに漂って、
『……』
Sm「お前の話を聞いた時、それを思い浮かんだ」
確かに、私はその“根無草”のようだ。
だいぶ前に家を出てからフラフラと彷徨ってる。大した理由もなく、ただ無気力に、刻々と過ぎる時間に身を任してるさまは根無草といっていい。
Sm「あぁ、安心しろよ。みんなお前の話聞いたけど、別に悪く思ってねぇからな」
『……あの、』
Sm「なんだ」
『どうしてあんな提案をしたんですか。私は出ていくと言ったのに』
Sm「Broooockが必死だったからな。あんなに熱くなってんの見たことない」
『……』
Sm「アイツ飽き性なんだよ。お前のこともすぐ飽きるだろうっていう前提で、提案したっていうのもあるが……」
視線を前に向けていたスマイルさんが私を見る。
カチリ、と紫色の瞳と目が合った。
Sm「アイツ、本気なんだな」
フッ、とこぼれた笑みはどことなく嬉しそうだった。
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作者名：おやすみこ | 作成日時：2022年2月24日 10時
