9話 ページ10
.
きりやんから受け取ったタオルをAちゃんに渡して、拭くようにお願いした。
きりやんは溜息をついて家の奥に戻っていった。たぶん風呂場の確認にいったのだろう。
『あの……』
Br「あ、Aちゃん、拭け…、……っ！！」
頭をすっぽりと覆っていたフードを取った彼女。濡れた前髪から、あらわになったその顔立ちに思わず息を呑んだ。
外は薄暗く、雨のせいで視界も悪かったから気づかなかったけど、よく見ると綺麗な顔立ちをしている。
美人さんといっても間違いないが、少し幼さを感じる輪郭が可愛らしさも
暖色系の灯りの下でも、その肌の色は不健康そうだけど、一点の傷や汚れもない肌はなめらかで、それこそ本当に人形のようだった。
彼女は僕が貸したパーカーを、小さく指さしていた。
『…これは、』
Br「え、…あぁ！風呂場のかごに入れといて。君の服も入れていいよ。一緒に乾かすから。あとで替えの服持ってくね」
わかりました、というように頷いた彼女は、また目を伏せてしまった。
伏せられた
Br「拭いた？じゃあ上がって、お風呂いこ」
Aちゃんを連れて風呂場に案内する。
風呂場の前の廊下できりやんとすれ違った。
彼がアイコンタクトで「あとで来いよ」と伝えてきた。これは尋問になるかなぁ…。
少し湿度のこもった脱衣所へ彼女を招く。
Br「じゃあゆっくり入ってていいから。…あっ服これ着て。下は僕のじゃ無理か…。あ、Nakamuのあるじゃん。これでいいや」
洗濯が終わって畳まれていた服がちょうど置いてあったから、そこから彼女が着れそうなものを選んで渡した。不在中の人の服もあるけど、まぁよしとする。正直、彼の服も着れるのか怪しいけど僕のよりマシだろう。
Br「じゃああとでね」
『……はい』
ここまで手厚くされると思ってなかったのか、少し呆気に取られた顔をしてる彼女を意外に思いつつ、脱衣所をあとにした。
きりやんと、おそらくもう一人が待っているリビングへ向かう。
僕が始めたことだけど、どう説明しようか。気が重たくなるが、ここで引き返してはいけない。
そのまま歩みを進めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おやすみこ | 作成日時：2021年12月1日 0時
