【WT】根無草は夜明け色の夢を見る【Br】 (ページ42)

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41話ページ42

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Br「Aちゃんいいよ。そんなことしないで」

『でも……』

Br「…ッ、もう、真面目だなぁAちゃんは！じゃあ、僕の言うこと一つ聞いてくんない？」

『…なに？』

おそるおそる顔を上げた彼女。
真っ黒な瞳がゆらゆら揺れてる。そんなに怯えないでほしい。僕は君に酷いことなんてしない。
安心させるように、まっすぐ彼女と目を合わせる。

Br「明日、デート行こ」

『デート…？そんなのでいいの？』

Br「そんなのじゃないよ！本当は今日僕が行きたかったんだよ！」

『そ、う…。わかった』

Br「決まりね。明日は連れ回しちゃうからね」

『うん』

力が抜けたように目を伏せた彼女。その瞳からはもう怯えの色は消えていた。

Br「あ、そうだ。Aちゃん、必要なものあったら遠慮なく言ってね。僕、疎(うと)いとこあるから…。なんかしたいことでも、してほしいことでもなんでも言ってね」

『……じゃあ、』

Br「んっ！？」

なんでも言ってと言ったけど、まさか早速お願いしてくると思ってなかった。意外すぎてびっくりした。

『私、あれで寝てもいい…？』

彼女がそっと指さしたのは、スマイルの部屋から持ってきた人間を骨抜きにするという馬鹿でかいクッションだった。

え？まさかあれ気に入ったの？
たしかに体が溶けそうになるくらい気持ちいいけど…。
Aちゃんをあれで寝かせていいの？大きいクッションだから、Aちゃんならちょうどいいのかな…？でも女の子をあそこで寝かせるのはなぁ〜…。

『ダメならいいです…』

僕が悶々(もんもん)と考えてると、Aちゃんは首を横に振って肩を落としてしまった。
あぁ、せっかくのお願いなのに！

Br「あっ、いやっいいよ！全然使って！？」

『…ありがと』

なんかスマイルに負けたみたいで悔しいなぁ。
心の中で不貞腐(ふてくさ)れるが、彼女の初めてのお願い事なので快く受け入れよう。

その日の夜から、Aちゃんはクッションで、僕はベッドで寝るようになった。

Aちゃんは体を器用に丸めて眠っている。つらくないかなぁって心配になるけど、すぐにすぅすぅと可愛い寝息が聞こえてきたから大丈夫なようだ。
僕も数日ぶりのベッドに潜って眠りについた。

実は……彼女の寝床交換のお願いは、寝苦しそうにしてる僕を案じてのことだった。
Aちゃんのその優しさに気づくのは、だいぶ後になってからだった。

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