39話 ページ40
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先輩の姿が見えなくなり、再び二人だけになると彼女はスッと表情を失くした。
その急な変わりように、ぞわりと背筋に
Kn「Aさん笑って………いや、作り笑い、かな」
『これで、クリアになりますか』
Kn「……Broooockは納得しないと思うよ」
『……』
いくらよくできた笑顔でも、所詮は偽り。
この子の作り笑いなんか見ても、アイツは違うって言って首を横に振るんだろうな。望んでるのは心からの笑顔って言ってたし。自分がやるんだって息巻いてたし。
Aさんは俺の言葉を聞くと顔を伏せてしまった。
Kn「ねぇ、Aさんは全く笑わないって聞いたけど、本当に笑ったことないの？」
『……ないです』
Kn「でもさっきの全然違和感なかったな。君がもともと笑わないって知らなかったら騙されちゃってたね」
『…笑ってたほうが、都合がいいこと多かったので…』
Kn「？ でもさっきのは……、………俺が困ってたから？」
『…、…はい』
Kn「そっか…。ごめんね、ありがとね」
情けないなぁ、俺。女の子に気遣わせちゃうなんて。
伏せた顔と目線を合わせるため、Aさんの顔をそっと覗き込む。
ついさっき綺麗に笑ってた彼女は……………
Kn「……Aさん、もう作り笑いはしちゃダメね」
『…？ きんときさん…？』
Kn「今のAさん…すごく苦しそうな顔してるよ」
『ッ！』
目に飛び込んだその顔は、なにか耐え忍ぶように険しくて苦しそうだった。
まるで嫌な記憶が蘇るのを耐えてるような……。
『そんなことないです』
Kn「でも…」
『大丈夫ですから』
Kn「……、…ん、そっか」
感情を押し殺した声だった。
たぶん今ここで嘘だと指摘しても、大丈夫だと一点張りされそうだ。
物静かな子で、何を考えてるかよくわからなかったけど、困ってた俺に気づき助けてくれたということは、素は優しくていい子なんだろう。
Kn「俺も、心から笑ったAさんが見たいな」
『……笑わないです』
Kn「それはどうかな、まだわかんないよ。Broooockはやる時やるからね」
『……』
よくできた疑いようのない綺麗な笑顔。
それを作り上げるのに、Aさんはどんな過去を歩んできてしまったのか。
彼女本来の笑顔を奪うほどの過去があったのか。それでも笑わなきゃいけない時があったのか。
……きっと、つらかったんだろうな。
Kn「さ、あと日用品だけ買って帰ろっか。他はBroooockが休みの時にね」
『…はい』
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作者名：おやすみこ | 作成日時：2021年12月1日 0時
