【＃コンパス】氷砂糖のような (ページ10)

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氷砂糖9つページ10

「Aさん、大丈夫ですか......？」

「すみません、ジャンヌさん......」

私は夢にうなされていたらしい。

たまたま飲み物を取りに来たジャンヌが、僕の部屋の前を通った時に聞こえたうめき声に驚き、様子を見に来てくれたという。

大丈夫ですよ、と言い微笑んだ彼女は、勝手に入ってごめんなさいと付け加えた。

「いえ、本当に大丈夫ですから......目を覚まさせてもらってよかったです」

「......それほどつらい夢、でしたか？」

そういった後、ジャンヌははっとしたように口を抑えてまた謝った。
そんなに謝らないでよ。

「......少し昔のことを思い出してしまっただけです、お気になさらず」

「......」

ジャンヌは本当に大丈夫か、という顔でこちらをみていた。
大丈夫ですよ。

「明日は歓迎会ですね」

徐にジャンヌは口を開く。

「......私なんかのために歓迎会なんて............どうかしましたか？」
見ればジャンヌが驚きを隠せない様子だった。

「......あ......いえ、Aさん、今「私」って言っていたので......つい」

ドクン。

心臓が強く跳ねた。

核心を突かれたかのように。

ドクン、ドクン。

「A、さん！？」
「......だ、大丈夫です......もう遅いので寝たほうがいいですよ」

で、でも......という彼女に「僕」は言う。

「ありがとうございました。......おやすみなさい」

「......おやすみなさい」

......そうか。
僕はまだ......

自分を欺ききれてないんだ。