氷砂糖33つ ページ34
「急に何を.....」
兄さんは戸惑いを隠せないようだった。
.....それと同時に、少し顔をゆがめる。
「ねえ.....兄さん。兄さんは何か知っているんでしょう?」
じゃないとおかしいよ。
そもそも如何してここにいるのか。それすらも私は理解できていなかった。
なんの関係もない場所に急に連れてこられた人間が、すぐに環境に適応できるのか。
「如何して私はここにいるの?」
「.....A」
ずっと胸の中にあった固まりのようなものが、姿をあらわにしたかのように。
私は「何か」を確信した。
これだけは。これだけは、兄さんに聞いておかなくちゃならない。
「私」がそう言っている。
.....ねえ、兄さん。
「私は.....本当にここに来たのは初めてなの.....?」
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気付かれてはいけない。
思い出されてはいけない。
.....知られてはいけない。
パンドラの箱.....というものは本当に存在するようだ。
「.....Aッ!」
最後の質問を口にした俺の妹.....Aは、意識を失いその場に倒れこんでしまう。
俺は、彼女を抱きかかえることしかできなかった。
体が動かない。
恐怖、焦燥、絶望。
.....記憶が、蘇る前に。
目の前にいる、氷砂糖のように脆くて儚い少女を救いたかった。
「.....また、救えなかったのかい?」
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作者名:夜蒼空 | 作成日時:2020年3月29日 14時