氷砂糖32つ ページ33
ぐらり。
視界が暗く歪んだ。
「あれ.....おかしい、な」
そういえばさっきの出来事だけでなく、不思議なことが幾つかある。
夢でうなされていた私を起こしてくれた、ジャンヌの温もり。
ふにゃりと笑うリリカの笑み。
.....零夜の手の感覚。
どれも.....
どれも、「過去に体験したことがある」。
そんなはずはない、のに。
頭にたくさんの情報を流し込まれているような、変な感覚に陥る。
私は.....
ここに来たことがある?
それとも、ただの思い込み?
『......もし僕が、前にも君の手を取ったことがあると言ったら......どう思うかい?』
あれが冗談じゃなかったとしたら。
零夜はほかの世界線の私だけじゃなくて、この「私」にも会ったことがあるのだろうか。
「来たことがある」「そんなはずはない」
私の中で二つの意見が飛び交い、段々わけがわからなくなってきた。
何を信じればいいのか。
「.....」
ぼうっと自分の手を見つめてみる。
青白い、温かみのない手。
でも感覚はある。覚えていられる。
私は、私自身の感覚を信じることにした。
--------
「.....私は............」
手に汗がべっとりとまとわりつく。
なぜか心臓がバクバクとうるさい。
.....まるで、「言うな」と言われているかのように。
「.....A?」
兄さん。わからないよ。
兄さん.....
兄さん兄さん兄さん.....!
「.....本当に、私なの?」
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作者名:夜蒼空 | 作成日時:2020年3月29日 14時