氷砂糖30つ ページ31
人の手は、不思議な温もりを持つ。
私の手は冷たいけれど。
多分、頭の中にはその記憶が残っていなくても、感覚が温もりを覚えているんだと思う。
頭と体がうまくリンクしない。
「......よくわからないよ。でも......」
何処かで納得している自分がいる。
彼に会ったことがある?
否、彼みたいな人なんか忘れるはずない。ならどうして。
わからない。
目の前の零夜が、心なしか歪んで見える。
「......なんてね。冗談だよ」
「......え?」
意味が分からず目を見開く。
零夜は意地悪っぽく微笑んで、「少しからかっただけさ」と続けて言った。
な.....
なんなんだこいつは!
そもそも彼に「人をからかう」なんてことができたのか.....人は見かけによらない。
「もしかしたら君と会ったことがあるかも」なんて恥ずかしいこと、言わなくてよかったと思う。
変な勘違いをされては御免だ。
..........胸の中の小さな痛みには、気付かないふりをした。
------------------
「.....お前」
「やあ。君から話しかけてくるなんて珍しいじゃないか」
暗闇の中、二人の話し声だけが響く。
「どうかしたのかい、いつもの紳士キャラが台無しだよ」
「..........何を企んでる」
「彼」は質問に答えない。
しばらくの間、二人の間に沈黙が流れる。
「.....何を企んでいるか、そう聞いたね」
「.....ああ」
「彼」は重い口を開いた。
闇の先では、「彼」は微かに「微笑んでいる」。
「.....僕なりの償いを、ね」
75人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜蒼空 | 作成日時:2020年3月29日 14時