【＃コンパス】氷砂糖のような (ページ30)

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氷砂糖29つページ30

「兄さん」
「.....ああA、どうかしたのか」

本を読んでいた兄さんは、私の呼びかけに気付くと慌てた様子でこちらを見た。
丁度良かった。兄さんの部屋に行こうと思っていたから。

「.....ひとつ、聞きたいことがあるんだ」
「珍しいな、Aが俺に聞きたいことなんて」

胸にしこりがあるような気分。
どうしても胸騒ぎがするような、落ち着かない気分。

「.....私は............」

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「......浮かない顔してるね、どうかしたのかい」
「......あ、零夜」

ある日の昼下がりのことだ。

最近、なにかと零夜が話しかけてくるようになった。
少し前までは意味不明な避け方をされていたのに......全く、よくわからない。

この間のバトルがきっかけなのかわからないが、兄さんとソーンの次に一緒にいるかもしれない......というほど、彼は妙に近づいてくる。

兄弟や同僚意外と深い関わりを持ったことのない私はつい警戒してしまう。

「......特になにもないよ。そうだ、ソーンがどこに居るか知ってる？」

零夜の近くにいると落ち着かない。
何というか......何か裏にあるのではないか、と身構えてしまうのだ。

「......」
「......零夜？」
「......君は僕のこと、信用していないのかい？」

じっと見つめられて、答えに詰まる。
彼が良い奴だと云うことはわかっているが、正直兄弟以外の人間はあまり信用していない。
疑うことも知恵。

「......そうか、わかったよ」

零夜は何かを汲み取ったかのように頷いた。

「......ねえ、A」
「......何？」

「......もし僕が、前にも君の手を取ったことがあると言ったら......どう思うかい？」