【＃コンパス】氷砂糖のような (ページ15)

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氷砂糖14つページ15

実際のところ、かなり虚勢を張っていた。

本当は陛下のような、女性の魅力が溢れているお方にあこがれている。
この間までは王宮に使える女給たちさえも羨んでいた。

「A様は本当に凛々しくて......本当に尊敬しますわ！」
「ええ、本当に。私たちもA様のような方を見習いたいです」

嘘吐け。

「......有難うございます」

数年前なんか、散々僕のことを否定してきた癖に。

女だからダメなんだとか、
男ならよかったのにとか。

当時はまだ可愛らしい少女(仮)だった僕は、兄さんに今の姿に変わることを猛反対された。

お前が変わる必要なんかない。

そのままのお前を受け入れてもらえるようにすれば良いだけだ。

......元が良い兄さんの言葉を、僕はどこかで僻んでいた。
兄さんだからわかってもらえるんだよ。

兄さんだから。

だから、兄さんの弟として生きる。
それではだめかな？

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「......僕、無理してたんだね」

ずっと黙って僕の話を聞いてくれた兄さんは、優しく僕の頭をなでた。
隣にはソーンもいる。

王宮にいる間、兄さんは最初は猛反対していたけど、途中から無理に反対するのをやめた。
かえって嫌なこと......あの時のことを思いださせてしまうかもしれないと思ったから。

「......僕は戻りたいのかな、昔に」

きっとそうだ。

だからこんなにも兄さんとソーンに、ダラダラと縋っているんだ。

ぽろぽろ言葉をこぼしていく僕に、ソーンが語り掛ける。

「......昔は、姉様が僕たちに心を開いていないのかな、って思うことがあったんです」

え、そうなの？
毎日暇さえあれば話していたような気が......

「ち、違います！相談してくれなかった、というか......」
「あまり悩み事を言わなかったからな、Aは」

そうだったっけ。

「でも、やっと今......姉様の肩の荷が降りたんじゃないかって。ちょっと安心してます」
僕の創造なんですけどね、と微笑むソーン。

肩の荷......
確かに、今まで心に張り付いていた何かが、いつの間にか取れている気がした。

「兄さん、ソーン」
「なんだ？」「何でしょう？」

「......私、頑張るね」
二人に笑顔を見せる。

今までの営業スマイル、というものではなくて、自然に零れて来た物を。

二人は私の顔を見て、優しく微笑んだ。