氷砂糖13つ ページ14
頭の中のうろ覚えの地図を頼りに、何とかカスタムステージまでたどり着くことができた。
まだ戦えるようになる調整がなされていない僕は、観戦ルームに入ることしかできない。
しかし、観戦ルームはステージの出入り口と直結しているため、ここから兄さんに声をかけることもできるみたいだ。
「おーい、兄さん!」
しきりにダミー人形相手に魔剣を振るう兄さんの背中に、声をかける。
こちらに気付いたのか、兄さんは振り向いた。
そしてすぐに驚いた顔をみせる。
......方向音痴で悪かったね。
カスタムステージから退出した兄さんを、ハーブティーを飲まないかと誘う。
ソーンも一緒だよ。
「Aのハーブティーなんて、久しぶりだな」
「はは、ソーンも全く同じことを言ってたよ」
なんだか僕まで嬉しくなってしまった。
疲れ気味な兄さんにはローズヒップを淹れてあげよう。
「......A、今朝は......」
「兄さん、今朝はごめんね」
兄さんの謝罪を遮るように言う。
兄さんには謝ってほしくないんだ。
「......兄さんやソーンに会うの、久しぶりで。ただ嬉しくて......」
自分でもよくわからなかったんだ、二人と話す感覚。
僕は兄さんのことが大好きだ。
勿論ソーンも。
ずっと一緒にいたいと、幾度も願っていた。
正直、まだ混乱している。
......実は、この世界に来るまでの記憶が曖昧なのだ。
気が付いたら管理人だというvoidollがいて、そのまま二人に再会して。
僕は本当にここにきてよかったのだろうか......
ソーンの部屋に着く。
僕は兄さんと一緒に部屋へ入った。
「お帰りなさい、兄様、姉様!」
そこには先ほど淹れたカモミールティーの香りが漂っていた。
ソーンも自分で好きなものを淹れたのだろう、微かにペパーミントの香りがする。
ぷつり、ぷつりと緊張の糸が切れていく。
意地、というのか。
虚勢、ともいうのか。
何とも言えないこの解放感に、ずっと身を委ねていたい。
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作者名:夜蒼空 | 作成日時:2020年3月29日 14時