【＃コンパス】氷砂糖のような (ページ13)

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氷砂糖12つページ13

兄さんはどこだろう。
訓練......なら、昨日ソーンに教えてもらったカスタムステージにいるはず。

そもそも訓練かどうかすら僕の推測だというのに。

兄さんやソーンは僕のことをよく知っているけど、僕はあまり兄さんとソーンのことをよく知らない。

勿論、好きな食べ物とか特技とか、癖なんかはわかる。

ただ、気持ちというものが僕には読み取れないのかもしれない。

兄さんは今どんな気持ちかな......
怒ってるかな、心配してくれてるのかな、悲しんでるかな。

「......あ」

考え事をしていたら違う場所に迷い込んでしまった。

ここは......談話室？
確かソーンはそう言ってたはず。

電気がついてるということは、誰かいるのだろうか。

「............」

ゆっくり音をたてないように進むと、なにやら人影が見えた。
ここからだとあまりよく見えない。

もう少しあっちへ......

「......何をしているんだい、君は」
「ひっ！？」

後ろから聞こえてきた声に返事するかのように、反射的に奇声が出る。

振り向けば黒髪で色白な、ライムグリーンが目立つ少年が立っていた。

「......君、誰だい？......知らない顔だね」

「......A＝ユーリエフです。以後お見知りおきを」

「ああ、なるほど......別の世界線の君と容姿が違ったから気付かなかったよ」
よくわからないことを述べる少年。

僕はアイシクルモーレの準備を......

「ま、待ってくれ。怪しいものではないから......僕の名前は零夜。そうか、今日歓迎会あるんだったね......君のか」

アーカーシャから聞いたよ、と彼......零夜が言う。
アーカーシャって何だろう。

「......そうだ、兄さ......アダムはどこか知りませんか？」

零夜は顎に手を持っていき、悩むような素振りを見せる。

......睫毛が長く、透き通るような目をしてるな......
まるで女性みたいだ。

「......なに見てるの」
気が付けば零夜がこちらをじっと見ていた。

「す、すみません、あまりに綺麗だったのでつい......」

僕は思ったことを正直に言うことにした。
変に濁しても不自然だし、これは純粋な誉め言葉だ。

「......」
「......零夜さん？」

なぜかこちらを見たまま固まる彼に声をかける。

「......君は......」
「はい？」
「......否、忘れてくれ。......アダムならさっきカスタム開いていたよ」

やっぱり訓練か。
僕も少しは人の心がわかるようになったのかもしれない。

僕は零夜に一礼してから、兄さんの元へ向かった。