捌拾話 ページ36
ジェルside
こ「えーっと、演劇名…カチューシャだってさ」
どこから持ってきたのか、ころんがバナナを咥えながらモゴモゴ言った。
さとみが持ってるビラをころんにしては真剣に読み耽ってる。さとみが『自分で持ってろよ』と言わんばかりの不機嫌顔でころんを睨んでた。
うん。ちょっと怖いな
な「カチューシャ…トルストイの『復活』を原作にした劇だね。ところでころちゃん、どこからそのバナナもってきたの?」
一言、買ったと言ったころん。あいつ意外と金持ってんな。
今度何か奢ってもらおか。
莉「あれ?なかなか始まらないね?時間的にそろそろだと思うんだけど」
莉犬もビラを覗き込んみながら懐中時計と予定時間をチラチラ確認し出した。
両サイドから身を乗り出され、さとみは窮屈そうだ。なんか申し訳なくなってさりげなく視線をそこから晒した。
ごめん兄ちゃん。
サ「えー、ご来場の皆様、本日行う演劇ですが役者が体調不良で舞台に立たなくなってしまいました。代わりにやってくださる方は手をあげてください」
団長のサトルだっけ?サトルさんがペコペコ頭を下げながらみんなに話しかけた。
ジ「はいはい!オレオレ!!」
こう見えて俺は学校で芸術部なんや。担当は演劇。
だから遠井さんもきっと移動演劇団のチケットを譲ってくれたんやと思う。
ま、それはともかく、一応経験者ではあるからやれると思ったんや。せっかくだから手ぇあげてみた。
サ「お、じゃあそこの男の子!お願いします!」
サトルさんはこっちを見てそう言ってくれたから俺は嬉々として席を立って舞台にあがろうとした。
そしたらまたサトルさんが申し訳なさそうな顔をして
サ「ゴメンナサイ、君じゃなくて、そっちの金糸雀色の男の子にお願いしたんだ」
と言った。
まさか…!
そう思って振り返るとるぅちゃんが、静かに、それでいて控えめに手を挙げていた。
ジ「る、るぅちゃん?なんでや、いつもこんなんせえへんやろ、」
びっくりして、途切れ途切れながらにもるぅちゃんに理由を聞く。るぅちゃんは何も答えてくれなかった。
しかも無表情で、明るい向日葵色の目はどこか遠くを見据えてる。
莉「るぅちゃん?何かあったの?」
さすがにおかしいと兄ちゃんも気づいたらしい。
それでも何も言わずにスクッと席を立ってスタスタ舞台に向かって歩いて行った。
すれ違いざまに『るぅちゃん』と小さく呼んでみたけど、その声は虚しくその場に漂うだけだった。
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スイートポテト丸 - 緋桜ひよ子@ミスキャト黄色担当さん» ありがとうございます!!なるべく早めに参章入りたいと思ってるのでしばしお待ちください(๑˃̵ᴗ˂̵) 良いお年を! (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
スイートポテト丸 - 朱莉@すけふれさん» ありがとうございます!そろそろ莉犬くん編の最終調整に入りますので一月中旬ぐらいから再開予定です!お楽しみに! (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
スイートポテト丸 - ごりらさん» ごりらさん!ありがとうございます!!尊敬…!?え、めっちゃ嬉しいです… (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子@ミスキャト黄色担当(プロフ) - スイートポテト丸さん» 第弐章、完結おめです!!莉犬君の過去編待ってます!!よいお年を(*^-^*) (2021年12月31日 11時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ごりら(プロフ) - とっても面白いです…、。尊敬…。 (2021年12月31日 1時) (レス) @page50 id: 0c5c330aa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スイートポテト丸 | 作成日時:2021年9月3日 22時