桜と苺の神隠し 弐

肆拾玖話 ページ4

莉犬side


空は快晴で、特に任務もやる事もなかったから外掃除でもしようと箒を持って外に出た。

千本桜とか、庭の八重桜とかの花びらが降り注いでいて『掃除も時間かかるかなぁ』って苦笑いした。


花びらを一箇所にまとめても、いたずらっ子な春風が吹き飛ばしちゃう。

これ、時間かかるとかじゃなくて終わらない可能性あるぞ。
でも始めた以上、最後までやりたいからなぁ。

そう思いながら黙々と箒を動かしてたら、1人の女の人が家の前で立ち止まった。



莉「あ、ご依頼ですか？」


話しかけてみたら女の人はゆっくりこちらを見た。
雰囲気が誰かに似てる気がする。誰かはわからないけど。



女「ここ、苺小隊本部ですか…？」



莉「はいそうです、立ち話も何なのでご案内します」



そう言って女性を屋敷に招き入れて、広間まで案内した。


ちょうど『昨日の夕飯をつまみ食いした罰』で屋敷内を掃除する刑を食らったころちゃんが広間を掃除してた。

ころちゃんは何かを察したのか『なーくん呼んでくる』って言って部屋を出ていった。


沈黙。気まずい。
そう思ってから少し経ってなーくんがやってきた。



な「お待たせいたしました。白鬼特殊部隊、苺小隊の隊長をやっております、ななもりと申します」


莉「同じく、副隊長の莉犬です」



なーくんに続いて挨拶を続けると女性は『ハルです』と小さな声で名乗った。

また少しの沈黙。

ころちゃんがお茶を三つ入れて持ってきた。
気が効くようになったな。軽く会釈しといた。



な「それではハルさん、今回はどのような御用件で？」



なーくんがそう問いかけて、俺はメモを用意した。
そうするやいなや、ハナさんは机に頭をぶつけそうな勢いで頭を下げた



ハ「息子ともう一度暮らしたいんです！息子を返してください！」



俺もなーくんもびっくりして言葉が詰まった。
息子を返して…？



な「と、言いますと…どういう事でしょうか」



冷静になーくんが聞き返す。



ハ「息子がここで白鬼特殊部隊として戦ってるのはわかってます！今更こんな事を言うのは我儘だってことも」


ハナさんは頭を下げたままそう言う。
一息ついてからまたこう言った


ハ「大好きな彼が言った事でも、息子は捨てるべきじゃなかった。すごく後悔してるんです！やり直したいんです！返してください…息子を……るぅとを」



それを聞いた途端、なーくんも俺もみんなの前にお茶を置いてたころちゃんもその場に凍りついた。

伍拾話→←肆拾捌話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す