漆拾参話 ページ28
ジェルside
さとみに手を引かれて闇夜を歩く。
正直、日が沈んだ後は家から出た事ないし、森で暮らしてた時も日が沈んだら寝てたからちょっと怖い。
寒い。独りぼっちになったあの日みたいに。
だけど今は1人じゃない。さとみの手は暖かかった。
こんなんでも兄ちゃんなんやな、なんてつくづく思って苦笑いする。
苦笑いをすると歯が剥き出しになって冷たい夜風に当たる。ちょっと痛い。でもまあ、いっか。
そう思ってたら釜祖神社の千本桜の前に着いた。
隣町からだいぶ距離はあったと思うんやけど、、、
近道めっちゃ使ったんかな。
まあそれはええとして。千本桜は浄化の呪いがかかっているから夜でも安心だってなーくんから聞いた気がする。
夜の千本桜は自らを桜色にぼんやり光らせて夜でも少し明るい。
さ「お、いいのあんじゃーん」
さとみの指が千本桜の根元付近に転がっていた紅梅色のゴム毬を拾い上げる。まだ新品みたい。ゴム独特の匂いがする。
さ「っし!蹴鞠やろーぜ。こっちが俺の陣地でそっちはお前のな」
そういうか早いかゴム毬を勢いよく蹴ってゴールを決めてきた。
ジ「あっ!それずるない!?」
そう言い返して俺も反撃開始。
寝静まったはずの街。静かで厳かな雰囲気が立ち込める神社にて全力で蹴鞠をする少年2人。
なんとも罰当たりやつらだと我ながら思う。
さ「俺、桜の神よ?桜の神が桜を祀る神社で遊んで何が悪いんだよ」
ってさとみは悪戯っ子みたいな顔で笑った。
さとみ、そんな笑い方するんやな
寒いはずなのに汗ばんでくる。振袖がもどかしい。
久しぶりに全力で遊んだと思う。
時間も悩んでいたことも全部忘れて無我夢中で遊んだんや。
蹴鞠ってこんな楽しかったっけ?
さとみと袴が汗で湿るぐらい遊んで、疲れ果ててその場に仰向けに寝転がった。
ああ、夜ってこんなに星が綺麗なんやな。
るぅちゃんにも見せたかったなぁ。
さ「あっはは!お前、蹴鞠なかなか上手いな!」
隣にさとみも寝転がってきた。星空を見ておおっ!って感嘆の声をあげている。
さ「こりゃ、黒い部分より白い部分の方が多そうだな。贅沢な安売りしてんなこりゃ」
ジ「何ゆうとんあんた」
思わずツッコミを入れて2人で笑い合う。
やっぱり兄弟ってええな、そう思った。
さ「…帰るか!」
ジ「せやな!」
そう一言会話をしてまた手を繋いで家に向かった。
帰宅後に汗まみれ泥まみれの俺らを見て莉犬にどやされたのはまた別の話。
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スイートポテト丸 - 緋桜ひよ子@ミスキャト黄色担当さん» ありがとうございます!!なるべく早めに参章入りたいと思ってるのでしばしお待ちください(๑˃̵ᴗ˂̵) 良いお年を! (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
スイートポテト丸 - 朱莉@すけふれさん» ありがとうございます!そろそろ莉犬くん編の最終調整に入りますので一月中旬ぐらいから再開予定です!お楽しみに! (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
スイートポテト丸 - ごりらさん» ごりらさん!ありがとうございます!!尊敬…!?え、めっちゃ嬉しいです… (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子@ミスキャト黄色担当(プロフ) - スイートポテト丸さん» 第弐章、完結おめです!!莉犬君の過去編待ってます!!よいお年を(*^-^*) (2021年12月31日 11時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ごりら(プロフ) - とっても面白いです…、。尊敬…。 (2021年12月31日 1時) (レス) @page50 id: 0c5c330aa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スイートポテト丸 | 作成日時:2021年9月3日 22時