桜と苺の神隠し 弐

漆拾弐話 ページ27

さとみside


ころんから連絡受けたはいいものの…
ジェルがどこにいるのか目星すらつかねえ。

つーかそうそう隣町に来るような事ないし。
今回みたいに打ち合わせでもない限り。

だからここに来てたとしても行く当てなんて……
いや待て、小学生の時にここの近くの公園でよく遊んでたような。


悶々と考えてみたけどそこ以外思いつかなかった。
まあ行ってみる価値はあるよな。

少し早足で公園に向かって歩き始めた。
小腹が空いてたし、途中の屋台でシベリアを２つ買って行った。


そういえばみんな、シベリア知ってる？
簡単に言えばカステラで羊羹を挟んだおやつ。

俺も大正の時代に来て初めて食ったんだけどこれがまた美味い。がっつり甘いから牛乳と合うんだ、これが。

だから瓶牛乳も忘れずに買っておく。


たしかベンチあったからそこで食おっと。
そう思って公園に入るとベンチに先客がいた。

寒そうに丸まっている橙色の髪の中学生ぐらいの男の子。

見間違えようのない弟の姿がそこにあった。



さ「おい、ベンチに靴乗っけんじゃねえ。泥付いて座れなくなるだろ」


脳天にチョップをかまして話しかける。



ジ「いった…げ、兄ちゃん」


“げ”とか言われたんだけど。なんだよ“げ”って
心配して探しに来た兄貴に言うセリフではないと思う。
まあそれは置いといて。


さ「日没から結構時間が経ったってのに、子供1人でこんな所にいるのは関心せんな貴様。寒くはないのかね」


ふざけた口調で話しかけながら冷え切ったその肩に羽織をかけて隣に座る。

ジェルは『兄ちゃんも子供やん』ってケラケラ笑ってた。

少しは元気付けられたかな？
ころんに連絡を入れてからまた話しかけた。


さ「兄ちゃん達、心配してるってよ。寒いし腹減ったし帰ろうぜ」


そう言ったらジェルは顔を曇らせた。



ジ「…いやや。帰りとうない」


なんかあったんかな。まあ首突っ込まれたくない事もあるだろうし下手に関与せんとこ。



さ「そか。んじゃ、遊ぶべ」



そう言ってシベリアを１つジェルに投げて、まだ温かいシベリアを頬張った。

最初はポカンとしてたジェルも食べるように促すと勢いよくそれにがっついてた。腹減ってたんやな。

シベリアを食べ終えるとジェルは『どこ行こうか』とベンチから元気よく立ち上がった。



さ「あのさ、ジェル」

ジ「ん？どしたん？」

さ「羽織返せ。死ぬほど寒い」


今日すげえ寒い。カッコ付けといてアレだけど貸さなきゃよかった。

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