伍拾捌話 ページ13
ジェルside
寒い。
気がつけば俺は、懐かしさすら感じるすり切れた毛布を体に巻きつけて、今にも崩れそうなボロ小屋にもたれかかっとった。
あたりは雪で真っ白で目が痛くなりそうだった。
この場所が見慣れた森の中やと気づいた時、同時にこれが夢だって事に気づいた。
過去の記憶が夢になっとるんやろな。
ゆっくり記憶をたどってみる。
あの日、旅行に行こう言われて馬車に乗り込んでうとうとしとったんや。
で、目が覚めて気がついたらここにおった。
寒いし、腹は減るし、大阪に帰りたいって泣いた。
いつもならおかんが来てくれて優しく抱きしめてくてたんや。
でもそのおかんはいくら待っても来なかった。
その時になって、ようやく俺は捨てられたことを理解した。
ボロ小屋はいつからか俺の寝床になった。
寂れた村の粗末な商店街から食料を盗んだり、お地蔵様のお供えものを拝借したりして生きる日々。
そんな事ばかりしてたから村の人から
散々罵倒されたし、殴られたり蹴られたりもした。
最初こそ辛かったけど、1年も経てばどうでもようなった。何も感じひん。
でもある日のこと。
いつも通り村から食料を盗ってきてボロ小屋に帰った時。1人の男の子がそこに横たわっとった。
年は、俺と同じか少し下か。
そんぐらいの子が寒さに震えながら横になってたんや。
嫌な共通点やけど、仲間が出来たみたいで嬉しかった。
ずっと1人で真っ暗になった心に光が灯った気がしたんや。
ジ「君、1人なん?寒いやろ。入りや」
男の子を招き入れて、なけなしの布をその子に被せてとってきた団子を差し出した。
ジ「初めまして。おれはジェル。君は?」
おどおどしながらその子が口を開く
る「る、るぅとです…3歳です…」
それがるぅちゃんとの出会いやった。
3歳でここにきてもうたんかと当時は悲しく思った。
チクリと痛む心を無視して満面の笑みで
ジ「じゃあるぅちゃん!よろしくな!今日から俺が兄ちゃんやで!るぅちゃんのおかんが迎えに来てくれるまで、俺が一緒にいたる」
るぅちゃんだけは、
るぅちゃんだけはあんな辛い思いせんように。
捨てられたとしても、幸せに暮らせるように。
願わくばご両親が迎えに来てくれますように。
それまで俺が兄ちゃんになって、るぅちゃんを守ろうと幼いながらに思った。
る「そうですか、よろしくおねがいしますジェル兄」
るぅちゃんはそういってふにゃりと笑った。
こうして俺らは兄弟になった。
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スイートポテト丸 - 緋桜ひよ子@ミスキャト黄色担当さん» ありがとうございます!!なるべく早めに参章入りたいと思ってるのでしばしお待ちください(๑˃̵ᴗ˂̵) 良いお年を! (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
スイートポテト丸 - 朱莉@すけふれさん» ありがとうございます!そろそろ莉犬くん編の最終調整に入りますので一月中旬ぐらいから再開予定です!お楽しみに! (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
スイートポテト丸 - ごりらさん» ごりらさん!ありがとうございます!!尊敬…!?え、めっちゃ嬉しいです… (2021年12月31日 22時) (レス) id: dc85d54b13 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子@ミスキャト黄色担当(プロフ) - スイートポテト丸さん» 第弐章、完結おめです!!莉犬君の過去編待ってます!!よいお年を(*^-^*) (2021年12月31日 11時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ごりら(プロフ) - とっても面白いです…、。尊敬…。 (2021年12月31日 1時) (レス) @page50 id: 0c5c330aa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スイートポテト丸 | 作成日時:2021年9月3日 22時