桜と苺の神隠し 弐

肆拾漆話 ページ2

ジェルside


巨大陰事変から一ヶ月が経った。4月で千本桜もいつもより濃い色になった。

千本桜は年中桜が狂い咲いてるからな。
本来は満開とか言うべきなんやろうけど。


今日も今日とて平和！あれ以来あんまり出動令とか依頼も来ることがなくてリラックスしとる。


ちなみに今俺は家から1番近くの喫茶店、“きさらぎ”でるぅちゃんにあいすくりんを奢ってもらってる。


この前のお礼やって。確かにねだったような気がせんでもない。

まだ春やけど、あいすくりんはいつ食べても美味いねんな。

そんな感じであいすくりんを堪能してたら



「弟に奢らせるとかちょっと引くわ。ごめんねるぅとくん？はいこれサービスの紅茶」


と、長い茶髪の女の子がお盆に紅茶を乗せてやってきた。

彼女はきさらぎの主人の一人娘の遠井さん。
実は同じクラスなんや！

本当は『如月 あかね』っていう名前なんやけど、
みんなから遠井さんって呼ばれてる。


なんでだろうね、遠井さんは「お前のせいだ」ってよく言ってるけど思い当たる節がありすぎてわからへん。



る「遠井さん！ありがとうございます、でも今回は僕からジェル兄へのお礼なんですよ」



遠「そうなの？それならいいんだけど」



そう言いながら厨房に戻っていく遠井さん。
遠井さんは俺の事なんやと思っとるんやろか。

はぁ、とため息が出た。
地獄耳なのか、遠井さんが『何か文句あんの？』と言いながらまたこっちにきた。



やべ、俺殺される。
兄ちゃん、今までありがとう。


心の中で家族に別れを言ってると



遠「今度の週末に移動演劇団がこの街に来るらしいのよ。お兄さん達と見に行ってきたら？」


って微笑みながら家族券を2枚くれた。


る「え、いいの？遠井さんは行かなくて大丈夫なんですか？」


驚いてそう聞き返したら



遠「この日、おばあちゃんの家に行く日なの。だから行けないのよね」


と言ってたから、ありがたく頂戴しとく。


それから何を話すわけでもなく、あいすくりんを食べ終えて、お会計を済ませて喫茶店を出た。



ジ「るぅちゃん、あいすくりんご馳走様！お礼とはいえありがとな！」


一応ご馳走になったからな。
お礼はちゃんといわなあかんよな。


る「いえいえ！お礼はお寿司でいいですからね！」


すげえ満面の笑み。
久々に見たわ、るぅちゃんの曇りなき爽やかスマイル。

さてはコイツ、最初からこれが狙いだったな。


腹黒こわいわぁ…
そう思いながら家に帰った。

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