夜桜の散る中に…【小説Ver.】

人間？災鬼？〔朱鬼〕 ページ14

指に絡まった糸を引く


「っ、ま、待ってくれ！話をしよう！な！？君みたいな子供が人を殺すなんて、何かの間違いだろ？さ、災鬼に脅されて仕方なく、だろ！？」


呆れる

馬鹿みたい

話を聞くまでもない


必死に私を説得しようとしているが、話なんてしない


「…」


「ま、待て！頼む！！命だk、…」


やっぱり、人は脆い

少し糸を引くだけで、すぐにバラバラになる


周りを見回す

バラバラになった脚、腕、胴体、頭

有名な刀匠が打った刀で切られたような、断面


「(…今日はここまでにしよう)」


翼を羽ばたかせ、飛ぶ
否、飛ぼうとした



「ぅ、あぁぁぁあ！！」



子供の、赤ん坊の泣き声


飛ぶのをやめ、声のした方に足を進める



「…」



「ぁ、ごめん、なさい…！ごめんなさい、ごめんなさい！」



二つほど角を曲がった先に居たのは、まだ生まれて間もない赤ん坊と、その子を抱いた母親らしき女性

何故、私に謝る？
嗚呼、私が災鬼だから

未だに謝り続ける女性
赤ん坊をあやす事もせず、ただただ謝り続ける



「…」



数歩近づき、手を伸ばす



「っ！お、お願いです！この子は、この子だけは殺さないで！私はどうなってもいいから！！！」



ピタリと手を止める


…私は、何をしようとした？
赤ん坊に手を伸ばして、あやそうとした？


馬鹿は私の方だ
人間じゃない化け物が、手を伸ばしたところで殺すだけ


そう、殺そう
それが私(災鬼)


能力を使うほどでもない

心臓を一刺し

それで終わる



「待って、お願いですから…。この子だけは、この子だけは…」



早く



「私はどうなってもいいから！」



早く



「お願いだから、この子だけでも見逃して！半年前に生まれたばかりで…！」



二人とも



「っ、貴女にだって、家族はいるでしょう！？」



殺せ



ナイフを振り上げる

そんなわけないのに、振り下ろす手が震える







「こっちから子供の泣き声がしたぞ！誰か！誰かいるか！？」







…嗚呼、今日は此処で終わり



「…命拾い」

「え？」



今度こそ翼を羽ばたかせ、空へ飛び立つ
一応、視界を塞ぐために発煙筒を投げておく



嗚呼、たくさん殺した



嗚呼、たくさん悲鳴を聞いた



嗚呼、殺せなかった



嗚呼、殺せなくて(殺さなくて)、残念だ(良かった)

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