任せてください、ケイトくん

任せて.6 ページ8

勿忘草の花言葉は、"私を忘れないで"。




オレが彼女を忘れることなんてないだろうなと、他人事のように思った。




視界で、勿忘草色の髪が揺れた。





『やっと呼んでくれましたね、ケイトくん。』




ｹｲﾄ「A、ちゃん？何で…」




『？、ケイトくんがAの名前を呼んだからですよ。』




ああ、そっか。




彼女はいつだって、オレが名前を呼べば現れてくれるんだ。





『ご命令を…ケイトくん。』




ｹｲﾄ「リドルくんを、オレたちを…ハーツラビュルの皆を助けて！！」




『はい。………承知しました。』





ダンッ、と効果音がつくように地面を蹴ってAちゃんが飛ぶ。




そして近くの木に飛び乗って、何処から出したのかわからないモーニングスターを片手でくるくると回している。






監「何ですかあの運動神経！？」




ﾃﾞｭｰｽ「木に飛び乗っている！？」




ｴｰｽ「バランス良すぎか！？」




ﾄﾚｲ「頼む、リドルを傷つけないでくれ…！無理難題だとは思ってる、でも！」





『Aにケイトくんが命じたのは、"リドルさんを含めたハーツラビュル寮生全員を助けること"。…ご安心ください、リドルさんを傷つけないように解決致しますから。だって、Aは』





『ケイトくん御用達の、万能メイドですからっ！』






薔薇の木を投げつけてくるリドルくんの攻撃をダンスでもするように華麗に避けて、Aちゃんはリドルくんの後ろに回り込む。





ﾘﾄﾞﾙ「お前も、ボクの邪魔をするのか！！！
ボクこそが、この世界の法律(ルール)だと言うのに！」




『…残念ですが、Aの世界の中心(ルール)はもう決まってるんです。』






『"汝、隣人を愛せよ"と言う言葉もありますが、生憎Aの両手は"一人"で埋まっていまして。』






Aちゃんがモーニングスターをハートの女王の人形に向かって振り上げる。





ぐちゃ、




何かが潰れる音がして、裂けた人形から飛び散った真っ黒な液体が視界を遮る。





再び目を開けると、そこには泣いているリドルくんの姿があった。

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