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『ありがとうございました。』

 そう言いながらペコリとお辞儀をして診察室のドアを閉めた。

 「楓。さっきの傷は、大丈夫なのか?」

 この御方は、そんな現場いくらでも見ているだろうに……

 『こういう事なんてしょっちゅうですよ。』

 「それは大変だなぁ。今すぐ病院にでも行くか?」

 そんなに心配しなくても大丈夫だというのに……

 『遠慮しておきます。』

 「そうか……」

 なんだこいつ……いきなり心配してきたと思ったら今度はすねる。

 幼いガキンチョか?

 ったく、いい年した大人だっていうのに……

 「それで……このあと寄りたいところがあるんだが、ちょっといいか?」

 『はい……』

 そう言って車に乗り込んだ。

 「ほら。ついたぞ。」

 「ここなんだが……少し片付けがしたいんだ。手伝ってくれるよな?」

 こいつ……素直に手伝えって言えよ。

 遠回しに言ってくるのが腹立つ。

 ここはキャンプ場だ。

 今日は、キャンプがしたいらしい……

 まずはテントかなぁ。

 「ここをこうして……あれ?」

 『ここはこうして、こうやるんですよ。』

 「あぁなるほどな」

 「楓。お前賢いな。」

 『気のせいですよ。』

 「そうか。気のせいか。」

 そう言いながら、一人で納得している。

 腹が立つ。

 いくら自分が不器用だとしても、あの言い方はないだろぅ。

 ほんっと腹が立つ。

 はぁぁぁー

 あっ、またため息をついてしまった。

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作者名:妖狼 | 作成日時:2021年7月26日 17時

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