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Birthday celebration story of HAECHAN
深い海の底から上に上がる感覚。
意識がだんだんと上にいくにつれて、聞こえそうで聞こえないもどかしい感覚がなくなっていく。
真っ黒な景色から光が視界いっぱいになる頃に聞こえてきたのは、起床を知らせる無機質なアラーム音だった。
「ん…、」
けたたましく鳴るそれは、私の睡眠を妨害するものでしかなくて少し乱暴に端末に手をかけ強めに画面をタッチして止める。
「……、なにこれ」
ふと薄目でディスプレイを見ると、台風の目のような彼からの着信が何件も来ていて思わず目が覚める。
「………、」
正直折り返すのは怖い。とても。彼の事だからまたとんでもないお願いをしてくるに違いない……しかも彼の誕生日の日にこんなに電話をするってことは……
推理小説に出てくる探偵のように頭を働かせていると、画面が突然切り替わってもう何度目かもわからない彼からの着信に変わる。
「……(どうしよう、…)」
多分彼は私が出るまで電話をかけ続けるだろう。花を買うのは午後からで大丈夫だし、彼のお願いをさっさと終わらせてもう少し寝ようと画面の緑色のボタンを押した瞬間、
" あっ！！やっと出た！！ちょっとヌナ！！"
スピーカーにしてないのに電話口から聞こえるよく通る声。
「もしもし、」
" ちょっと〜！何回も電話したんだけど〜？？"
「ご、ごめん寝てて、…」
" 今日なんの日かわかってるでしょ？？ "
ちょっとだけめんどくさい彼女みたいな事を言い出す彼にもちろんだよ、と返すと嬉しそうな声で話し始めた。
" じゃあ早く準備してヌナ！！一緒に花買いに行こう！！ "
「へ、一緒に…？」
" うん！一緒に！ "
声を聞けばわかる、彼は今すごく機嫌が良くてプレゼントをそわそわと待っている子供のようだ。
「ヘチャナ…今まだ朝早いよ…お花買うのは午後からでも大丈夫だから…」
" 何言ってんのヌナ！！もう俺ヌナの部屋の前にいるからね！"
その瞬間、部屋のインターホンが鳴り向こう側にいる彼の少し独特な笑い声が聞こえてきた。
" ヌーナー、早くー"
「…わかった、わかったから。とりあえず自分の宿舎戻って…」
" えーここで待ってちゃダメなのーー？ "
「準備できたら連絡するから…」
" 絶対だからねー？！？ "
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作者名：久遠 | 作成日時：2021年9月23日 10時
