画面越しに見える僕だけの君が笑う ページ4
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コンコンとノック音が聞こえてドアを開けた。
まだ途中なんだけど曲聞いてもらおうと思って、と作業部屋にやって来たAは、渡された音源を聞き終えてヘッドホンを外して振り返り返事をする頃には、すっかりお疲れなのか俺のパーカーを抱いて椅子に落ち込みスヤスヤと眠りについていた。
初めてAを見たとき、初めて彼女が顔を見せたあの日、明らかにレベルが違うと感じて嫉妬したメンバーもいたようだけど、俺はAを取っ捕まえて真っ先に連絡先を交換した。同じ日本人であるという意味不明な口実をつけて。
「ねえどう思う？」
「もっかい聴かせて」
それから彼女は何度も幾度も曲が出来上がる度に俺のもとへ持ってくるようになった。誰もが口を揃えてプロだと彼女には誰も叶わないと言う中で、一人だけAの違う感情を知っていることに身震いしたことを覚えている。
Aが初めて書いた曲がグループの曲として世に広く知れ渡ったのはそれからすぐのことだった。あまりにも切ないのに力強くて儚かった。
それはどことなくAをそのまま生き写したような詞で、一度だけ訊ねたことがある。こんな愛を犯したことがあるのかと。
笑って流された。
「でも、『君』はこんなに愛されてるのに
ㅤ全く気がつかないで他の方を向いてるなんて、
ㅤなんだかちょっぴり可哀想な子だね」
「…、わたしはね、気づいていないフリをするの」
ただ感想として歌詞中に散りばめられた『君』に同情しているとAは目を細めて色っぽい溜め息をはいた。そしてククッと笑って答える。
何があってもその駆け引きからは手を振りほどかないけれど、距離が可笑しくその愛が形として崩れてしまう前に駄目になる前に逃げなきゃ、いつまでも夢のままで
「ずっと、愛されていたいもの」
そう話すAからはどうかこのまま同じように愛して、という叫び声が、どうかお願いだから心まで求めて愛してと懇願するような声が聞こえたような気がした。
スヤスヤと眠りにつくAの頭を撫でるとAの頬をツーっと涙が伝っていくのが目に見えて少ししょっぱい頬にちゅ、とキスを落とした。
暗くなって落ちた画面に映るAがあまりに美しくて作業室の電気も落とした。
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願っても届かないなら奪い去るから**→←呼ばれ慣れずに此の愛は巡り続ける
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